資源循環については、GIP2024において、工場廃棄物のリサイクル率が99%目標のところ、99.2%と目標達成した。また、サーキュラーエコノミー型事業モデル/製品が、13事業の目標に対し、15事業とこちらも達成となっている。一方で、再生樹脂の使用量については、2022〜2024年度の合計9万トンを目指したが、4.5万トンにとどまり、大幅未達となった。
園田氏は「未達の一番の理由は、品質とコストだ。再生材はまだ静脈系(使用された状態からの回収の動き)が弱く、品質や量の面で十分な数が集まらない。それを使用する設計者側へのアピールもまだまだ必要だ。再生樹脂のグレードを標準化し、使用しやすい環境を業界で整えていく取り組みが必要だ」と考えを述べている。
サーキュラーエコノミー型事業については、以下の15事業で実施した。
この内、「ビューティー機器のモジュラー設計」と「洗濯機のシェアリングサービス」を2024年度に新たに開始した。
ビューティー機器のモジュラー設計として取り組んだのは、1つのボディーに9種のヘッドが着脱可能なモジュラー式製品「MULTISHAPE」だ。2022年6月から欧州や北米市場向けに5種類のヘッドをオプションとして販売開始したが、2024年9月に新たに4種類のヘッドを追加し、同じボディーでありながら、ヘッドを交換することで全身のトータルケアを可能とした。メインユニットや電源アダプターを共通化していることで、従来と同等機能で比較すると総重量を60%削減し、省資源化に貢献している。
洗濯機のシェアリングサービスとして新たに開始したのは、シェア型賃貸住宅などでの洗濯機の共同利用を快適に行えるようにする「LAUNDROOM(ランドルーム)」だ。ランドルームは、最新のドラム式洗濯機と遠隔管理システム、メンテナンスサポートをパッケージしたサービスだ。共同利用する洗濯機の稼働状況を使用者に知らせ、無駄なく利用できる他、運営面でも管理者が稼働状況の可視化や修理サポートなどで効率的に管理できる。シェアリングにより、1台の洗濯機をより多く稼働させることができ、資源の無駄を削減できる。
サーキュラーエコノミー型事業は、目標通り増やすことができているが、パナソニックHD サステナビリティ経営強化プロジェクト リーダーの奥長秀介氏は「ビジネス面で考えると初期に収益を生み出すことが難しい。費用対効果を考えると進められなくなる」と課題について語る。
そこで、社会にプラスのインパクトを与えた事象なども含めて金額換算して価値を見える化する取り組みを開始した。「社会インパクトを正しく金額換算するのは難しいが、国際的に認知されている複数手法を組み合わせて試みた」と奥長氏は述べる。
考え方としては、従来型の事業と、サーキュラーエコノミー型事業を比較し、資源再利用によるバージン材の使用や廃棄物の削減などのポジティブな効果を算定し、そこから再資源化によるエネルギー消費の増加や、資源回収によるCO2排出量の増加などを引いて算出する。例えば、パナソニック エコテクノロジーセンターによる家電リサイクル事業と、家電リファービッシュ事業を合わせた環境インパクトとしては17.1億円があったとする。
奥長氏は「まだ社会的な環境インパクトより売上高の方が大きく、サーキュラーエコノミー型事業の価値を示せているとは言い難い状態だ。しかし、環境インパクトだけでなく、その他の社会的インパクトなども組み合わせることで、価値を証明できないかと考えている」と述べている。
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