エトリアでは、複合機の共通エンジンの開発が最も大きな目標になっているが、事業計画を達成するためには、リコーと東芝テックの計画に合わせた製品の市場投入も並行して進めなければならない。設立からの1年間では、リコーの2製品を計画通り市場投入している。1つはPFUの業務用スキャナーの技術を融合した「SDシリーズ」、もう1つはリユース率86%を達成した再生複合機「CEシリーズ」である。
そして共通エンジンの開発は「既存資産の相互活用」「強いモジュールの組み合わせ」「ゼロベースの新規エンジン開発」という3つのフェーズを並行して進めている。
2024〜2025年の取り組みになるのが既存資産の相互活用である。コスト低減に優れる東芝テックのエンジンをそのまま活用して、リコーブランドの新興国向けモデルとして横展開する取り組みを始めている。既にインド市場向けの展開が決まっており、今後は中国や東南アジアなどに広げていく計画である。
2025年から取り組んでいるのが強いモジュールの組み合わせだ。当初は、両社の既存エンジンが持つ特徴を基に、市場要求などに合わせて個社のコントローラーを組み合わせる形を想定していた。しかし現在は、次の段階であるゼロベースの新規エンジン開発を前倒すことを目的に、エンジンの構成要素となるモジュールについて、両社が強みを持つものを組み合わせる形での開発に切り替えた。中田氏は「この方が、ゼロベースの新規エンジン開発が早期に始められる」と強調する。新規エンジン開発をベースにした製品の投入時期は、現時点の手応えとして2026〜2027年を見込んでいる。
新事業領域への挑戦として挙げたのが、バーコードやRFIDを用いるAuto-ID市場だ。EC(電子商取引)、物流、製造におけるデジタル化と自動化の需要により、現在の2兆円の市場規模から年率5〜8%の成長が続く見込みだ。また、製造業との関連では、EUのエコデザイン規則(ESPR)により、製品にDPP(デジタルプロダクトパスポート)が求められるが、このDPPには2次元バーコードの採用が決まっている。
現在、Auto-ID市場向けのエトリアの保有資産は、東芝テックが小売市場で高いシェアを獲得してきたバーコードプリンタのみである。まずは、このバーコードプリンタのラインアップ拡大による販売最大化で業界トップシェアの達成を目指す。また、複合機の共通エンジンの展開はリコーと東芝テック向けに限られるものの、Auto-ID市場向けの製品はそういった縛りがない。そこで、東芝テック以外のブランドオーナーや他ブランドへの展開も模索する。
さらにAuto-ID市場向けの新規開発では、東芝テックが複合機の技術を基に開発したバーコードプリンタ向けプラットフォーム「A-BRID(AutoID×e-BRIDGE)」と、リコーと東芝テックが有する技術、例えばサーマルペーパー、熱転写リボン、RFIDリーダーなどを掛け合わせていく方針である。「より小さいエリアに微細な印刷ができる要求があるが、そのための技術開発が可能になる」(中田氏)。最終的には、両社の複合機ビジネスと同様に、業務の自動化ワークフローに組み込めるソリューション展開に拡大していきたい考えだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.