富士経済は、ペロブスカイト太陽電池の世界市場と日本市場に関する調査結果を発表した。2040年の市場規模は、2024年比約66.9倍の3兆9480億円に達すると予測している。
富士経済は2025年7月16日、ペロブスカイト太陽電池の世界市場と日本市場に関する調査結果を発表した。2040年の市場規模は、2024年比約66.9倍の3兆9480億円に達すると予測している。
今回の調査は、ペロブスカイトの単接合型と結晶シリコンとのタンデム型(多接合型)を対象に実施した。同調査によれば、2024年の市場は、単接合型が前年比61.3%増の500億円、タンデム型が同80%増の90億円となった。本格的な量産は単接合型が先行しているが、2020年代後半からタンデム型の量産も進み、市場の急拡大が予想される。タンデム型は、変換効率の向上が可能で、2030年前後から発電事業用途などでの導入増が期待される。
単接合型の主な用途は、Saule Technologiesの電子棚札や欧州を中心としたIoT(モノのインターネット)デバイスの組み込み型電源が中心となっている。今後、建物据付型太陽電池(BAPV)の本格的な量産開始が予定されており、2040年には市場の半数以上をBAPVが占める見通しだ。特に、中国メーカーによるギガワット級の量産が注目されている。
タンデム型は現在、BAPV用途の試験的な生産や実証的な設置、サンプル出荷が行われている。今後、大手の結晶シリコン太陽電池メーカーの量産計画もあるため、2040年には市場の約6割をタンデム型が占めると予想される。
採用基板別に見ると、現状ではガラス基板が9割を占める。中期的な大規模量産計画のある中国では、地上や屋根設置型の発電事業向けが多いことからガラス基板タンデム型の開発が進んでおり、世界的にも採用増加が見込まれる。よって、2040年時点では、ガラス基板型を中心に発電事業向けでの活用拡大が予想される。フィルム基板型の商用化はまだ少ないものの、軽量かつフレキシブルな特性を生かし、建材一体型太陽電池(BIPV)用途などでの利用が期待され、2040年には市場の3割強を占めると予測した。
日本市場では、2025年度に積水化学工業と積水ソーラーフィルムがペロブスカイト太陽電池の商用化を開始予定。他社も2027年度ごろの商用化を目指しており、BIPVやBAPVでの採用増加、タンデム型の開発、生産が期待されている。
ガラス基板型は、結晶シリコン太陽電池の生産ラインが活用できること、生産の難易度が低いことなどから、将来的に日本市場の主力になると考えられる。フィルム基板型は、耐久性や製造コストに課題があるが、応用製品の重量制限が少なく、印刷技術を活用したロールツーロール方式での量産が可能で、将来的な伸びが予想される。
2030年度以降の日本市場は、ガラス基板タンデム型の本格出荷が始まり、市場の拡大が期待される。2025年度の0.8億円(見込み)から、2040年度342億円への成長が予測される。
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