従来の設計では、設計者が勘や経験を基に基本構造を設定し、その上でパラメーター(部品の長さや形状など)を何度も繰り返し変更しながら、最適な組み合わせを探る、いわゆる「パラメーター最適化」が行われてきた。
しかし、この手法では、最初の基本構造の設定が不適切だと、いくらパラメーターの最適化を重ねても良い解にたどり着けず、設計サイクルを何度も繰り返すことになり、設計開発期間が長期化するという課題があった。
これに対し、同社の設計AIが目指すのは、設計領域を設定した上で、その中に配置される材料のレイアウトについて、「最も優れた構成は何か」をAIに設計させるというアプローチだ。構造ゼロベースによる革新的な設計案の導出を狙っている。
「従来の人の勘や経験に基づく方法では、時間的な制約に加え、人間である以上、結局は限られた範囲内でしか設計空間を探索できない。しかし、AIを活用すれば、人間よりも広い空間を、より早く、効率的に探索することができ、より優れた設計案の導出が可能となる」(太田氏)
設計AIの代表的な適用事例として、パナソニックの電気シェーバー「ラムダッシュ」に搭載されているリニアモーターの小型/高出力化への取り組みが挙げられる。
この取り組みでは、設計AIを活用して、リニアモーターの小型化と高出力化の双方に貢献する構造を導出した。設計AIの計算過程を確認すると、初期段階では出力値が低かったものの、時間の経過とともに最適な方向性を見いだし、最終的には、現行製品の設計値(人の勘や経験に基づく最適値)を上回る構造を導き出すことに成功した。
「これは、設計AIが勘や経験に頼ることなく、短時間で革新的な構造を得られることを示している」(太田氏)
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