EV向けワイヤレス給電の現在地と普及に向けた課題和田憲一郎の電動化新時代!(57)(2/3 ページ)

» 2025年06月27日 08時00分 公開

SWPTとDWPTの法規や国際標準化の動向

和田氏 SWPT、DWPTの規格化や国際標準化は完了する流れになっていると考えてよいのか。それとも、まだ課題があり今後も審議が必要な状況なのか。

横井氏 規格化や国際標準化は数多くのアイテムがあり、DWPTも含め主要な標準はIS(国際標準)またはPAS(Publicly Available Specification:公開仕様書)として発行済みだが、まだ審議中のものもある。課題として残っている内容で主なものは、例えば欧米では大電力を扱いたいとの意向が強く、IEC(国際電気標準会議)でPASを2025年11月目標で発行するところまでこぎ着けている。また難航しているのが、EMC(不要輻射)関連であり、CISPR(国際無線障害特別委員会)においてワイヤレス給電が他の製品に影響を与えないか議論を続けている。

堀氏 幾つか課題はあるが、主要な規格化や国際標準化の方向性はほぼ固まっており、全ての要件が定まらないからと待っていると遅れてしまう。このような新しい技術は、市場導入が先行し、細かな法規の整備は後から付いてくるのではないか。

表1 表1 SWPTの規格化/国際標準化の活動状況(2025年6月現在)[クリックで拡大] 出所:横井行雄氏作成
表2 表2 DWPTの規格化/国際標準化の活動状況(2025年6月現在)[クリックで拡大] 出所:横井行雄氏作成

和田氏 EV向けのワイヤレス給電はこれまでも多様な方式が提案されていたが、現在は国際標準化として磁界共鳴方式に統一されたのか。それとも、他の方式も同時に検討されているのか。

横井氏 EV向けはワイトリシティが主導権を握ったこともあり、ISO(国際標準化機構)/IEC、SAE(米国自動車技術会)などで審議されている対象は全て磁界共鳴方式である。なお、総務省の型式指定では2025年2月に、工場内向けのAGV(無人搬送車)向けに電界方式(最大出力4kW)のものが省令改正として出されている。

和田氏 以前、中国がEV向けワイヤレス給電に積極的であると聞いたことがある。ワイヤレス給電のリード役は依然として中国なのか。

横井氏 ワイヤレス給電に関しては、米国ワイトリシティだと思う。彼らは2020年以降、韓国、中国を中心にSWPTの搭載可能車両を増加させている。加えて日本でもWEVの設立に合わせて日本法人を設立し、幹事社の1社として積極的に活動している。

和田氏 では日本のリード役はどこか。やはりWEVなのか。具体的なマイルストーンはどうか。

横井氏 これからはWEVが中心になっていくと考えている。2030年までの活動ステップも公表されている。

図3 図3 WEVの活動STEP[クリックで拡大] 出所:WEV

和田氏 ワイヤレス給電装置を設置した車両は通常車両に比べて、どれくらい価格が上がるのか。またグランド側の装置(地上側、Primary Coil)は、工事費別でどれくらいの価格になるのか。

横井氏 はっきりとした情報はないが、販売されると、車載側のワイヤレス給電装置の価格は量産レベルで20万〜30万円アップ、グランド側も工事費別で20万円程度になるのではと聞いたことがある。導入初期はそれなりに高価になるとみられるが、量産/普及期に向けて大きく下がっていくのではないか。

和田氏 国内外で、自動車メーカー以外にグランド側装置を開発/販売しようとする企業はあるのか。

横井氏 グランド側装置は基本的に自動車メーカーのビジネス領域ではないと考えている。地上側の設備には、EVに電力を直接供給する地上コイル以外に、電力制御/通信制御を行う路側設備などに加えて、とりわけDWPTの場合には、道路そのもの施工、電力網の運用管理などまでが含まれるためだ。

 国内外というくくりでは、ドイツのABBなど多くの電力関連企業や、DWPTではElectreonというイスラエル発の企業が世界的な活動を活発化させている。日本でもグランド側装置についてダイヘン、新電元、島田理化工業などが精力的に取り組んでいる。また、DWPTに対応する道路の設計/施工では大成建設、大林組、東亜道路工業などの道路会社も積極的に取り組んでいると理解している。

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