使用済みタイヤを新品の“材料”とするブリヂストンの精密熱分解技術とは?リサイクルニュース(2/3 ページ)

» 2025年06月23日 07時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

「EVERTIRE INITIATIVE」とは?

 リサイクル事業では、「再生資源/再生可能資源比率の拡大」や「リサイクル事業探索」を行っている。「再生資源/再生可能資源比率の拡大」では、2026年にタイヤの再生資源/再生可能資源率で39%以上を、2050年に100%サステナブルマテリアル化を目標に掲げている。稲継氏は「ブリヂストンでは2024年の実績でタイヤの天然ゴムや合成ゴムを中心に再生資源/再生可能資源比率で39.9%を実現し、前倒しで目標を達成している」と語った。

再生資源/再生可能資源比率の拡大 再生資源/再生可能資源比率の拡大[クリックで拡大] 出所:ブリヂストン

 「リサイクル事業探索」ではタイヤの水平リサイクル事業「EVERTIRE INITIATIVE」の取り組みを進めている。

 タイヤの原材料は、天然ゴム、合成ゴム、充填剤、配合剤、補強繊維、鋼材から成る他、構造は、トレッド、サイドウォール、キャップ、ベルト、プライ、ビード、インナーライナーで構成される。ブリヂストン リサイクル事業準備室 室長の加藤貞治氏は「タイヤ製造プロセスの1つである加硫工程では、ゴムに硫黄を追加して加熱し、ゴムの分子と硫黄を化学反応で結合させ、固く弾力がある丈夫なゴムとする。しかし、加硫工程によりタイヤの原材料が強く接合されるため、使用済みタイヤをそれぞれの原材料に分離し、再利用していくことが難しい」とコメントした。

タイヤの構造と原材料構成 タイヤの構造と原材料構成[クリックで拡大] 出所:ブリヂストン

 一方、欧州では「欧州エコデザイン規則(ESPR)」が2024年に施行された。ESPRでは、デジタル製品パスポート(ライフサイクル全体に関する情報をデジタルで記録/管理するシステム)を通して、耐久性、信頼性、修理可能性、リサイクル素材の使用率などを消費者に提供することを規定している。2025年には廃車由来を含むプラスチック再生材の新車への使用を義務化した「欧州ELV規則案」が成立した。2029年には新車の再生材率20%(うち廃車由来15%)が義務化される。

タイヤ資源循環の必要性 タイヤ資源循環の必要性[クリックで拡大] 出所:ブリヂストン

 国内でも政府が2025年2月に策定した「2040 GXビジョン」では再生材利用の義務化について触れている。2025年の通常国会に提出予定の法案で、再生材利用の具体的な義務化内容が規定される見通しで、現在は内容が議論されている。

 こういった状況を踏まえて、ブリヂストンはEVERTIRE INITIATIVEの取り組みとして、ENEOSや東海カーボンと共同で使用済みタイヤを対象に精密熱分解によるケミカルリサイクル技術の研究開発を推進している。使用済みタイヤを精密熱分解することで得られるタイヤ分解油や再生カーボンブラックを用いてタイヤ製造することを目指している。

 タイヤ分解油は、ENEOSが開発を進める高性能触媒や処理プロセスを活用しリサイクルオイル(ナフサなど)に加工した後、リサイクルオイルを化学変化させブタジエンなどにし合成ゴムの材料とする。再生カーボンブラックは東海カーボンが二次処理しタイヤの材料として使いやすくしたものを使う。

使用済みタイヤのケミカルリサイクル全体像 使用済みタイヤのケミカルリサイクル全体像[クリックで拡大] 出所:ブリヂストン

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