AUTOSARを「学ぶ」にはどうすればいいのかAUTOSARを使いこなす(36)(2/3 ページ)

» 2025年05月15日 09時00分 公開
[櫻井剛MONOist]

AUTOSARにおける「必須知識」

 では、「必須知識」を具体化するためには、どのようにしたら良いのでしょうか?

 それに至る道筋の一つは、「それぞれの役割で行う活動/作業を明らかにすること」にあります。

 このアプローチは「(全ての人に共通の)必須知識」という言葉と矛盾するようにも見えるかもしれません。

 ですが、「全ての人が行うこと」を見いだせたら、それは「必須知識」といえるでしょう。

 さて、それは何でしょうか?

 答えの一つは、「プロジェクト計画書の理解」です。これは、プロジェクトマネジャーだけではなく、プロジェクトに関わる人に必須の能力でしょう。

  • (1)AUTOSARプロジェクトの進行状況を理解できること(活動/作業の流れの把握)
  • (2)(1)に必要となるリソースを理解できること(エンジニア、コンポーネント、ツール、情報、時間などの把握)

 一般的に、上記の(1)と(2)の要素はプロジェクトの実現戦略の中心となります。

 そして、それらの最低限の前提知識として、以下の(3)と(4)を学ぶ必要もあります。

  • (3)(1)や(2)に登場する用語/概念(AUTOSARの基本的な用語/概念)の理解と、AUTOSAR仕様の読み方を学ぶこと(前述のものに関するものに加え、自力で理解を広げていくために必要な部分について)
  • (4)基本的なエンジニアリング面および理論的な各種原則に立ち返ること。例えば:
    • スケジューラビリティの確保
    • 起動時間の短縮
    • NVRAMマップの後方互換性維持
    • インテグレーションゴールの定義(本連載第35回を参照)
    • etc.

 なお、(1)〜(3)は「見積依頼書や見積書の理解」にも必要になりますので、見積もりにかかわる部門(見積もりを依頼し交渉する調達などの部門や、見積もり提示を行う対面側の企業の技術営業などの部門)の方々にも必要な能力だといえるでしょう。

 また、(4)の要素はしばしば、組織プロセスや支援インフラ(ツールや教育など)に組み込まれていて、普段は意識せずに利用していることも少なくありません。

 AUTOSARについて学び始めた時、従来利用できたものの恩恵を一時的に利用できなくなることもありますので、普段受けている恩恵をあらためて意識して表現していくことも必要になることでしょう(特にAUTOSARを導入したての組織)。これは、受講に当たっての「前提知識」として整理され示されていることもあり、参考になる場合があります。

 そして、受講者はコース終了後に独り立ちしていかなければなりません。

 特に開発や検証、そしてプロセスの開発や自動化に携わるのであれば、遅かれ早かれコースで説明された内容の枠の外に自ら打って出なければなりません。

 ですから、以下の(5)を促していくべきでしょう。

  • (5)継続的な自己研さんや次のステップのための道筋を知ること(例えば、手書きSW-Cの開発者であればRTE APIなどの知識も必要でしょうし、標準化参加メンバーであれば過去のAUTOSAR仕様や議論を調査する方法を学ぶことも必要です)
図1 図1 AUTOSARでの「どんな立場の人でも必要な知識」[クリックで拡大]

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