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パナソニックHDは構造改革で国内外1万人削減、関税影響は米国生産で780億円に抑制製造マネジメントニュース(2/3 ページ)

» 2025年05月12日 06時00分 公開
[三島一孝MONOist]

構造改革で国内外1万人の人員削減を実施

photo パナソニックHD グループCEOの楠見雄規氏 出所:パナソニックHD

 パナソニックHD グループCEOの楠見雄規氏は「2022~2024年度の中期目標は未達となったことを重く受け止めている。過去から見ると2024年度の業績は悪くないように見えるが、同業他社と比べると低収益であることは間違いない。ベンチマークしている同業他社の業績を見ると、パナソニックグループの販管比率は5%程度高く、この固定費構造にメスを入れないと将来の成長に転じることができない」と危機感をあらわにする。

 そのため、固定費構造改革による収益性改善と、事業ポートフォリオマネジメントを実施し、2026年度までに1500億円以上の収益改善を実現する。さらに、2028年度までに3000億円の収益改善を進める。これにより2028年度にはROE(自己資本利益率)10%以上、調整後営業利益率10%以上を達成する。

photo 構造改革への取り組み[クリックで拡大] 出所:パナソニックHD

 2025年2月の発表後、これらを事業会社ごとに具体的に検討した。具体的には、本社本部改革として、間接機能やオペレーションの集約や効率化、技術テーマの選択と集中を行い、470億円の改善を実現する。また、家電事業の改革で、分散した営業や間接部門の集約や効率化、グローバル標準コスト展開により330億円の改善効果を計画する。さらに、事業部門改革として、赤字事業の撤退や終息、拠点の統廃合を行う。また、全グループのIT投資の効率化や間接機能の集約と効率化を進める。これにより420億円の改善効果を実現する。これらを合わせると1220億円となる。

photo 収益改善効果目標の内訳[クリックで拡大] 出所:パナソニックHD

 併せて、グローバルで1万人規模の人員削減を実施する。国内5000人、海外5000人規模を計画しており、2025~2026年度の期間で行う。営業、間接部門の集約や事業終息、拠点統廃合に伴う人員削減で、国内グループ各社で早期希望退職プログラムを実施するとしている。

 終息予定の事業や統廃合予定の拠点などについては現時点で明らかにしていない。ただ「事業会社に内部で検討して出してもらったものをベースに積み上げた計画であり、外部と交渉が必要なものについては最終的に確定していないものもあるが、方向性自体は決まっている。そのため1万人規模の人員削減計画が大きく増えることはない。事業や拠点の統廃合については、決まり次第あらためて発表する」と楠見氏は説明する。

photo 人員の適正化[クリックで拡大] 出所:パナソニックHD

 2025年度の構造改革費用については1300億円を予定する。構造改革費用の各セグメントでの内訳は、くらし事業が620億円、コネクト分野が20億円、インダストリー分野が160億円、その他が500億円となっている。「これらの構造改革費用の金額が、人員削減の比率と比例するわけではないが、構造改革費用の多くが人員の適正化に関わるものなので、部分的には比例する面はある」と和仁古氏は述べている。

photo 2025年度の構造改革費用の内訳[クリックで拡大] 出所:パナソニックHD

 楠見氏は「雇用に手を付けるのは忸怩(じくじ)たる思いで、申し訳なく思っている。しかし、経営基盤を変えないと10年後、20年後まで持続的に成長することはできない。悩んだ結果だが、判断をさせていただいた」と決意を述べている。

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