日本テキサスインスツルメンツ(日本TI)は、業界初の電力パス保護機能を搭載するデータセンターの電源向けパワーマネジメントIC「TPS1685」を発表した。
日本テキサスインスツルメンツ(日本TI)は2025年4月8日、オンラインで会見を開き、業界初の電力パス保護機能を搭載するデータセンターの電源向けパワーマネジメントIC(PMIC)「TPS1685」を発表した。従来のディスクリート部品で構成する電源回路では最大4kWまでしか扱えなかったが、新製品を用いれば6kW以上の電力パス保護が可能になる。既に量産開始前の数量での受注を開始しており、価格200米ドルの評価基板「TPS1685EVM」も販売している。
TPS1685は、システムを中断することなくコンポーネントの取り付けや取り外しを可能にするホットスワップコントローラーとFET、センス抵抗を集積したICだ。HPC(高性能コンピューティング)やAI(人工知能)などの用途で電力需要が増加する近年のデータセンターでは電源アーキテクチャを12Vから48Vに移行しており、TPS1685も48Vアーキテクチャに対応している。
TPS1685は動作入力電圧範囲が9〜80V、電流容量が2〜20Aとなっているが、複数個を並列動作することで合計電流容量を拡大できる。例えば、評価基板のTPS1685EVMは、TPS1685を2個搭載することで2kWの電力パス保護の設計を評価できるようになっている。従来は、ディスクリート部品で構成する複数の電力パス保護回路を並列動作させると抵抗値や電流値の不整合が起こりやすく、電流容量を拡大することが難しかった。TPS1685では、1個のICをコントローラーに指定してシステム全体の電流を監視できるため、より多くの個数を用いて並列動作を行える。また、TPS1685への回路集積により抵抗値の差も小さくできる。このため従来は最大4kWとされていた電力パス保護を6kW以上に引き上げられるようになった。
回路集積によって電力パス保護回路の占有面積も削減できる。同機能を持つディスクリート部品のフットプリントが380mm2であるのに対し、TPS1685は6.0×5.0mmサイズのパッケージで30mm2に抑えられている。電力パス保護回路全体の占有面積も、TPS1685の採用によって50%削減できるという。
これらの他、フォルトイベントに対する正確で高速な応答、ユーザー設定可能な過電流ブランキングタイマー、FETの状態監視機能などのインテリジェントな保護機能も備えている。TPS1685の派生品である「TPS1689」は、故障ログ記録用の内蔵ブラックボックス機能を利用可能だ。
なお、TPS1685はパワーエレクトロニクスの展示会「APEC 2025」(米国ジョージア州アトランタ、2025年3月17〜19日)で発表された。これと併せて、GaN(窒化ガリウム)ベースのパワーステージ(ハイサイドとローサイドのMOSFET2チップとゲートドライバICを1つのパッケージに集積した電力変換段)の新製品として、業界標準のTOLLパッケージを採用した「LMG3650R035」「LMG3650R025」「LMG3650R070」なども発表されている。
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