TE Connectivity Japanでは、工場のスマート化などにおける外観検査やAGV(無人搬送車)の効率走行などにAIの活用を積極的に進めている。ITI 2025で課題として挙がったAIトレーニングについても、エンジニアに対して「AIとは何か」という基礎的レクチャーを行うのに加えて、2026年4月までをめどにAIを活用したノーコードプログラミングの学習を行う方針である。
同社 オートモーティブ事業部 技術・開発本部 統括部長の平泉善揚氏は「エンジニアは自身の経験則とAIが出した結果にズレがあることが気になるものだ。AIリテラシーを高めるなどトレーニングを行うことで、このズレを小さくしていくことが可能になる」と語る。なお、TE Connectivityでは、コネクターなどの樹脂部品の製造に用いる金型の最適化でAIの活用を進めている。従来は、熟練技術者の経験則を基に最適化を5回以上繰り返すこともあったが、この最適化のプロセスに用いる内製ツールに、AIやノーコードプログラミングを適用することで、最適化を1〜2回で完了できるようになるという。
また、ITI 2025の調査結果にもある通り、日本は海外と比べてAIに対して楽観的で、特に若手から中堅のエンジニアがAIに抵抗がないことを挙げた。「コネクターなど電子部品の設計手法、手書き図面から2D CAD、そして3D CADに進化していったが、エンジニアが不要になったわけではない。AI活用も同様の方向性で受け止められている」(平泉氏)。
米国の第2次トランプ政権の発足により、北米を中心にESG指標など持続可能性目標に注力しない企業も出始めている。TE Connectivityは本社を北米に置く製造業だが、2032年までにGHG(温室効果ガス)プロトコルのスコープ3で、2032年までに32%削減という目標を新たに掲げるなど持続可能性目標を重視する姿勢を堅持している。
鶴山氏が所管する自動車向け事業をはじめ、TE Connectivityはグローバルで事業と拠点を展開している。「TE Connectivityは、関税対応などのために必要となる最適な地産地消に向けた生産移管を行うためのインフラがあり、フレキシビリティーを持って対応できる。だからこそ、長期的に求められるであろう持続可能性目標に注力する姿勢を堅持できる」(同氏)という。
また、鶴山氏は「エンジニアリングの観点では、モノづくりにおいてCO2排出量を下げる、原価を下げる、技術を向上するは一石三鳥で同時に狙えることだと考えている。これまで、樹脂部品用の金型は大切にメンテして使い続けるのが当たり前だったが、この一石三鳥の考え方で新しい製品を開発し、そこで得た利益によって金型を更新するという流れが新しい技術に取り組むモチベーションにもなっている」と強調する。
なお、TE Connectivity Japanの自動車事業としては、EV(電気自動車)シフトが中国と欧州で進む一方で、日本と北米で先行きが不透明になるなどまだら模様ではあるものの、中国の急速なEVシフトを支えてきた成果を基に、日本の自動車メーカーの電動化に向けた要求に応えていく方針だ。
また、ECU(電子制御ユニット)のアーキテクチャが今後ドメイン、ゾーンと進んで行く中で、「TE 1Stop Solution」として車載ネットワークの高速化とECUの消費電力増大の両方に対応していく構えだ。
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