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産業データ連携に必要な「信頼性」とは? 経産省がウラノス基盤拡張で報告書製造マネジメントニュース(1/2 ページ)

経済産業省は、信頼性のある産業データ連携の実現に向け、日本版データスペース「ウラノス・エコシステム」におけるトラスト確保の報告書を公開した。自動車の蓄電池や化学物質管理などのユースケースを基に、リスク要因と対応策などを整理している。

» 2025年04月02日 08時00分 公開
[MONOist]

 経済産業省は2025年3月28日、「信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)」の実現に向けデータ共有の枠組みとして展開する「ウラノス・エコシステム」の相互運用性確保のカギとなる「トラスト(信頼性)」についての報告書を公開した。

ウラノス・エコシステムを通じた取引に必要な信頼性

 ウラノス・エコシステムは、企業や業界、国境を跨ぐ横断的なデータ共有やシステム連携を行うための、日本版のデータスペース(データ共有圏)についての枠組みだ。欧州におけるデータスペース開発の動向を踏まえつつ、自律分散型のデータ連携システムを実現するため、アプリケーション、データスペースコネクターなどのソフトウェア部品を疎結合で構成するアーキテクチャを設計している。データ主権者が自身のデータをコントロールできるよう、データ主権にも配慮した設計となっている。

photo ウラノス・エコシステムの基本コンセプト[クリックで拡大] 出所:経済産業省

 データの共有利活用を、安全で信頼できる形で実現するには、データそのものやデータに関するステークホルダーの信頼性確保のためのトラストの担保が求められる。しかし、トラストの担保の要素や水準はユースケースやデータの性質によって異なる。さまざまな局面において実際にデータの共有と利活用を行うユーザー企業のニーズとのバランスを重視し、ユースケースに応じたトラスト要件を整理することが求められる。

photo ウラノス・エコシステムの拡大および相互運用性確保に向けたトラスト研究会 報告書[クリックでWebサイトへ]

 そこで、経済産業省では2024年11月から「ウラノス・エコシステムの拡大および相互運用性確保に向けたトラスト研究会」を開催してきた。その成果として今回、「ウラノス・エコシステムの拡大及び相互運用性確保 に向けたトラスト研究会 報告書」を公開した。

 今回の報告書は、ウラノス・エコシステムでの産業データ連携を安全で信頼できる形で推進するために必要なトラストの考え方と在り方を整理したもので、産業データ連携に関わる幅広いステークホルダーを対象としている。

 具体的には、産業データ連携の拡大に伴う、なりすましや参加権限を満たさないなどによる不正な事業者の参入や、データ改ざんや不正確なデータの混入リスクに対し、トラストを「相手が期待を裏切らないと思える状態」と定義した。その上で、国内の8つのユースケース(蓄電池、自動車 LCA、電池パスポート、化学物質管理、鉄道、電力、人流データ、スマートビル)を対象に、データマネジメントフレームワーク(DMF)を用いて、要求されるトラストについて分析を行った。

 各業界のユースケースを分析するに当たり、リスク分析や対応策の整理を進めるために、共通して以下の4つの点での質問をベースにそれぞれの特徴を明らかにしている。

  1. 連携対象となるデータ
  2. データ連携の場
  3. データに関わるリスクと不確実性
  4. リスクの対応策
photo トラストの整理に当たっての基本的な考え方[クリックで拡大] 出所:経済産業省

 さらに、分析の結果、データ連携に伴う主要なリスクを以下の3つに整理した。

  1. 事業者に関するリスク
  2. データそのものに関するリスク
  3. 連携基盤などに関するリスク

 「事業者に関するリスク」は、各ユースケースに共通するリスクであり、官の情報を基にしたトラスト確保が分野横断的に有効となる可能性があることが示された。一方、「データそのものに関するリスク」「連携基盤などに関するリスク」は「場」から要求される条件や基準で個別対応することが合理的であり、ユースケースやその設計において議論や対処すべきとされた。

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