ナトリウムイオン電池がモバイルバッテリーに、車載で実績のあるセルを採用電動化(1/2 ページ)

エレコムはナトリウムイオン電池を使用したモバイルバッテリーを発売する。

» 2025年03月14日 07時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

 エレコムは2025年3月13日、ナトリウムイオン電池を使用したモバイルバッテリーを同月中旬に発売すると発表した。モバイルバッテリーでナトリウムイオン電池を使用するのは「世界初」(同社)だとしている。容量は9000mAhで、店頭実勢価格は9980円。

ナトリウムイオン電池を使用したモバイルバッテリーを発売する[クリックで拡大]

 今回発売する新商品は、ナトリウムイオン電池を採用することで、幅広い温度環境下での放電(機器の充電)に対応するとともに、高い安全性と長寿命を実現した。放電できる温度は−35〜+50℃なので、冬の屋外でも利用できるとしている(モバイルバッテリーを充電できる温度は0〜40℃)。

 また、くぎを刺して意図的に内部短絡を起こしても発熱や発火に至りにくいこともナトリウムイオン電池の特徴だとしている。電池セルとしての安全性を確保するだけでなく、電気用品安全法(PSE)に準拠した安全性評価を行うとともに、サーマルプロテクションによって製品温度の上昇を監視/制御する。さらに、過充電/過放電/過電流防止機能や、短絡保護機能、温度検知機能といった保護機能を搭載した。モバイルバッテリーの評価は、日本の横浜技術開発センターと、中国の深セン技術開発センターの2カ所で行う。

ナトリウムイオン電池/リン酸鉄リチウムイオン電池/リチウムイオン電池の性能比較[クリックで拡大] 出所:エレコム

 一般的なリチウムイオン電池を使用したモバイルバッテリーの場合、サイクル寿命は500回程度だが、ナトリウムイオン電池の場合は10倍の5000回となり、長期間にわたって使用できるという。また、GaNデバイスを採用して小型化するとともに、充電効率も高めた。

 ナトリウムイオン電池を使用したモバイルバッテリーは、スマートフォンやタブレット端末、ワイヤレスイヤフォンなどの充電に対応している。バッテリー容量が1800mAhのスマートフォンを2.9回、3000mAhのスマートフォンを1.7回充電できる。ワイヤレスイヤフォンなど充電電流の小さい小型機器には定電流モードで充電するなど、接続機器を自動で見分けて最適な出力で充電する。

 なお、電気用品安全法はナトリウムイオン電池を想定していないため、新商品はPSEマークを取得できない。PSEマークの対象になるには2〜3年かかるとみられる。また、ナトリウムイオン電池は普及前のためリサイクルについてまだ十分に議論されておらず、JBRC(Japan Portable Rechargeable Battery Recycling Center)の回収対象にも含まれていない。廃棄する場合は自治体に問い合わせるか、エレコムに引き取りを依頼する必要がある。エレコムはJBRCに対し、ナトリウムイオン電池も回収対象に含めるよう提案している。

 モバイルバッテリーに使用したナトリウムイオン電池は外部から調達した。社名は非公開だが中国企業で、車載用のナトリウムイオン電池を手掛けている。モバイル機器向けの小さいサイズのセルはまだ生産量が少なく、「なんとかエレコム向けに供給してもらった」(エレコムの担当者)。

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