基本中のキホン「熱伝導」をおさらいするCAE解析とExcelを使いながら冷却系設計を自分でやってみる(2)(4/4 ページ)

» 2025年02月12日 09時00分 公開
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熱伝導方程式の導出

 前項では、幅Δxの領域の熱収支について、入ってくる1秒当たりの熱と出ていく1秒当たりの熱が等しいとしました。ここで、“入ってくる熱の方が多く、発熱体が加熱される状態”を考えます。次式となります。

式32 式32

 1秒当たりの温度上昇は、温度上昇速度と捉えることができます。式33で表しましょう。

式33 式33

 加熱に使われる熱は、1秒当たりの温度上昇量に質量と比熱を掛けたものになります。式18を変形して、加熱に使われる熱を加えると式34となります。

式34 式34[クリックで拡大]

 式22を代入した後、式を変形していきましょう。

式35 式35

 フーリエの法則(式8)を代入します。

式36 式36

 定数をひとまとめにします。以下に記す温度伝導率aを次式で定義し、式36に代入します。ついでに、微分記号を偏微分記号に変更します。

式37 式37
式38 式38

 さらに、3次元版に拡張しましょう。温度Tは座標(x,y,z)と時間tの関数と考えることができ、T(t,x,y,z)と表せます。

式39 式39

 ナブラ演算子(参考文献[2])を使うと、式40となります。2は、ナブラ演算子同士の内積で「ラプラス演算子」というそうです。

式40 式40

 参考文献[1]に載っている式が出来上りました。これが熱伝導方程式の一般形となります。温度伝導率aにも意味があって、温度の伝わりやすさと解釈できます。後は、流体の主流の温度Tと伝熱界面の温度Twの関係が分かれば、全ての温度が求まります。これには「熱伝達率」というパラメーターを使います。次回以降は熱伝達率を説明し、ヒートシンクの熱解析をシミュレーションと、紙と鉛筆で行っていきます。 (次回へ続く

参考文献:

  • [1]日本機械学会|機械工学便覧 A6 熱工学(S61)
  • [2]矢野健太郎|解析学概論|裳華房(S53)

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Profile

高橋 良一(たかはし りょういち)
RTデザインラボ 代表

1961年生まれ。技術士(機械部門)、計算力学技術者 上級アナリスト、米MIT Francis Bitter Magnet Laboratory 元研究員。

構造・熱流体系のCAE専門家と機械設計者の両面を持つエンジニア。約40年間、大手電機メーカーにて医用画像診断装置(MRI装置)の電磁振動・騒音の解析、測定、低減設計、二次電池製造ラインの静音化、液晶パネル製造装置の設計、CTスキャナー用X線発生管の設計、超音波溶接機の振動解析と疲労寿命予測、超電導磁石の電磁振動に対する疲労強度評価、メカトロニクス機器の数値シミュレーションの実用化などに従事。現在RTデザインラボにて、受託CAE解析、設計者解析の導入コンサルティングを手掛けている。⇒ RTデザインラボ

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