旭化成と倉敷市は、岡山県倉敷市で同社のゼオライト系CO2分離回収技術を使用したバイオガス精製システムの性能評価と実証に向けて、同システムを倉敷市児島下水処理場に新たに設置した。
旭化成と倉敷市は2025年2月4日、岡山県倉敷市で同社のゼオライト系CO2分離回収技術を使用したバイオガス精製システムの性能評価と実証に向けて、同システムを倉敷市児島下水処理場に新たに設置し、竣工式を開催したと発表した。
なお、同社の製造統括本部 水島製造所(岡山県倉敷市)と倉敷市は2022年9月15日に、カーボンニュートラル社会の実現に向けた包括連携協定を締結している。今回の脱炭素化に資する実証実験の推進は、両者の連携項目の1つに当たる。
バイオガス精製システムは、CO2を選択的に吸着するゼオライトを使用するとともに、旭化成が開発したPVSA(Pressure Vacuum Swing Adsorption)プロセスを適用することで、バイオガスからCO2を除去して、高純度のメタンガス(バイオメタン)を高回収率で精製する。PVSAは圧力と真空を使って特定のガスを分離する技術だ。圧力をかけてガスを吸着剤に吸着させ、その後真空状態にして吸着されたガスを放出させることにより、バイオガスからCO2を取り除く。
バイオガスは下水汚泥や生ごみなどから発生し、メタンを約60%、CO2を約40%含んでいる。バイオガス中のバイオメタンは欧米において天然ガスの代替として、またカーボンニュートラルな燃料として注目されており、需要が拡大している。
一方、倉敷市では児島下水処理場で下水汚泥から発生したバイオガスを用いて発電している。このバイオガスの一部をバイオガス精製システムに取り入れ、バイオメタンを精製する。
分離回収したCO2をCCU(Carbon dioxide Capture and Utilization:二酸化炭素回収/有効利用)やCCS(Carbon dioxide Capture and Storage:二酸化炭素回収/貯留)の技術に取り込めればカーボンネガティブを実現する可能性がある。
今回の実証では、バイオガスを無駄にしないため、分離したメタンは返送し、発電燃料として使用する。バイオガス精製システムの運転は2025年2月に開始し、実施場所は児島下水処理場だ。
両者の役割に関して、旭化成はバイオガス精製システムの設備設計や設置、運転、性能評価と実証を担当し、倉敷市は下水汚泥発酵により発生したバイオガスおよび試験用地の提供を担った。
旭化成は、今回の実証後、バイオガスの精製を手掛ける国や地域での実証を経て、2027年頃にバイオガス精製システムの上市を計画している。
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