ベトナムは人口が1億人を突破し、20代、30代の若い世代も多い。市場規模や成長性、安定した社会情勢、豊富な労働力などで投資先としても注目を集めており、約2000社の日系企業が操業している。
パナソニック エレクトリックワークスベトナムでGeneral Directorを務める坂部正司氏は「ベトナムの1人当たりGDPは4000米ドルを超えており、ハノイやホーチミンの大都市では6000米ドルを超えている。日本では1970年代に1人当たりGDPが4000米ドルを超え、人口も1億人に達して高い経済成長を遂げていった。ベトナムは今、当時の日本と同じような状況に差し掛かっており、経済成長が非常に期待できる」と語る。
パナソニックとしては、1973年の日本とベトナムの国交樹立以前からベトナムで事業を展開しており、1971年にラジオやテレビの製造、販売を開始して2021年に事業進出50周年を迎えている。
現在、パナソニックのグループ全体で、パナソニックエレクトリックワークスベトナムの他、ソフトウェア開発を行うパナソニックR&Dセンターベトナムや、冷蔵庫や洗濯機を製造するパナソニック アプライアンスベトナム、車載用リレーなどを製造するパナソニック インダストリアルデバイスベトナムなど6社あり、合わせて6800人の従業員を抱えている。
電材事業に関しては、ベトナムで1994年から配線器具の販売を始め、2002年には電路(DINブレーカ)の販売を開始した。当初、製品はタイもしくは日本で生産されていたが、2011年にタイで発生した大洪水で同社の工場も浸水して操業停止に陥ったことから、BCP(事業継続計画)対策の一環として輸出製品の販売比率が高かったベトナムの製造拠点設立を決めた。
2013年に南部のビンズオン省に工場と本社機能を持つパナソニック エコソリューションズベトナム(現パナソニック エレクトリックワークスベトナム)が設立され、2014年からは工場が稼働してベトナム向け製品の生産を始めている。その他、ホーチミンとハノイに販売拠点があり、工場も合わせて約1500人の従業員が働く。工場は設計機能も有しており、ベトナムに適した製品の企画開発から評価、製造までが一貫して行えるようになっている。
また、販売代理店を務める現地企業のNanoco Groupと1994年から続く強固なパートナーシップも成長に大きく貢献している。
Nanoco Groupはベトナム全土に21拠点を持ち、ベトナムの全57省と6直轄市をカバーし、強固なサプライチェーン網を構築して現地施工業者などのユーザーに製品を届けている。
パナソニック エレクトリックワークスベトナムの売り上げは2007年の11億円から2017年には144億円、2023年には222億円に至った。
「生活インフラを支える商材として、安心、安全をベトナムの皆さまに届けるべく、高品質、適正価格、安定供給を実現する一貫生産、供給体制を構築できたことが成長の基軸になった」(坂部氏)
2030年には電設資材で現状の約1.6倍に当たる176億円のベトナム国内販売を目指している。Nanoco Group CEOのルーン・リュク・ヴァン氏も「パナソニックは日本では配線器具で8割のシェアを持っていると聞く。ベトナムではまだシェアは40〜50%であり、われわれはともにまだまだ成長できる」と期待する。
坂部氏も「現状のシェアをもっと上げていって、日本に近い状態にしたい。そのために配線器具を中心にもっと商品領域を増やしたい。市場が成長していくに従って、集合住宅向けの高容量MCCB(配線用遮断器)やKNX(ホーム/ビルオートメーションの国際規格)向けのIoT(モノのインターネット)商品を製品展開して、さらに成長の軌道に乗せたい」と意気込む。
次回はパナソニック エレクトリックワークスベトナムにおけるモノづくりを中心に取り上げる。
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