開発者レビューとは、自社内のエンジニアが開発者目線でレビューを実施し、要求仕様書を完成してよいか判断します。形式はいろいろありますが、隣のエンジニアに「ねえねえ、ちょっと見て」という軽い感じか、部長を交えた格式高いレビューを実施するなんてこともあるでしょう。主な指摘事項をリスト2に示します。
No. | レビュー例 |
---|---|
1 | 社内フォーマットに合わせて要求仕様書が書かれていない |
2 | 仕様書に曖昧な箇所がある |
3 | 顧客からヒアリングした内容と仕様記述が合致していない |
4 | ある条件下の異常処理が抜けている |
5 | 今の仕様記述をより簡単に実現する方法がある |
リスト2 開発者レビューの例 |
リスト2の例の通り、あくまでも開発者目線から、ソフトウェアとしての良しあしを判断します。ただし、顧客の要求を正しく理解できているかは、厳密にレビューできません。ここが開発者レビューの限界です。
顧客レビューでは、顧客も交えて要求仕様書のレビューを実施し、要求仕様書を完成としてよいか判断します。主な指摘事項がリスト3です。
No. | レビュー例 |
---|---|
1 | 顧客側が想定していた意図と異なる仕様記述となっている |
2 | 仕様書に曖昧な箇所がある |
3 | 工数がかかるので取り下げたい |
4 | ここは必須なので、大変でもお願いしたい |
リスト3 顧客レビューの例 |
リスト3にある通り、ソフトウェアの技術的な話というよりは、顧客の運用をイメージした指摘が多くなります。特に、顧客のイメージとのすり合わせを多く行うでしょう。これが完了できれば、要求仕様書の完成です。
今回は、レビューの全体像について説明しました。レビューとは、成果物を確認する作業で、開発者視点と顧客視点の両面を確認し、要求仕様書を完成させます。
開発者レビューでは、他のエンジニアにレビューを依頼し、ソフトウェアの観点から要求仕様書をチェックします。一方、顧客レビューでは、顧客の運用イメージも踏まえて意図した要求仕様書となっているか確認します。また、顧客レビューが完了すると、要求仕様が完成し、要求仕様フェーズが完了です。長かったですね。
要求仕様フェーズは、学校の授業でもなかなか取り上げづらいところです。本シリーズをきっかけに、ソフトウェア開発がどのような手順で進んでいくかのイメージができれば幸いです。
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東海大学 大学院 組込み技術研究科 非常勤講師(工学博士)
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