イチから全部作ってみよう(16)レビューは要求仕様書完成に向けた最後の関門山浦恒央の“くみこみ”な話(185)(2/2 ページ)

» 2025年01月23日 07時00分 公開
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4.2 開発者レビュー

 開発者レビューとは、自社内のエンジニアが開発者目線でレビューを実施し、要求仕様書を完成してよいか判断します。形式はいろいろありますが、隣のエンジニアに「ねえねえ、ちょっと見て」という軽い感じか、部長を交えた格式高いレビューを実施するなんてこともあるでしょう。主な指摘事項をリスト2に示します。

No. レビュー例
1 社内フォーマットに合わせて要求仕様書が書かれていない
2 仕様書に曖昧な箇所がある
3 顧客からヒアリングした内容と仕様記述が合致していない
4 ある条件下の異常処理が抜けている
5 今の仕様記述をより簡単に実現する方法がある
リスト2 開発者レビューの例

 リスト2の例の通り、あくまでも開発者目線から、ソフトウェアとしての良しあしを判断します。ただし、顧客の要求を正しく理解できているかは、厳密にレビューできません。ここが開発者レビューの限界です。

4.3 顧客レビュー

 顧客レビューでは、顧客も交えて要求仕様書のレビューを実施し、要求仕様書を完成としてよいか判断します。主な指摘事項がリスト3です。

No. レビュー例
1 顧客側が想定していた意図と異なる仕様記述となっている
2 仕様書に曖昧な箇所がある
3 工数がかかるので取り下げたい
4 ここは必須なので、大変でもお願いしたい
リスト3 顧客レビューの例

 リスト3にある通り、ソフトウェアの技術的な話というよりは、顧客の運用をイメージした指摘が多くなります。特に、顧客のイメージとのすり合わせを多く行うでしょう。これが完了できれば、要求仕様書の完成です。

5.おわりに

 今回は、レビューの全体像について説明しました。レビューとは、成果物を確認する作業で、開発者視点と顧客視点の両面を確認し、要求仕様書を完成させます。

 開発者レビューでは、他のエンジニアにレビューを依頼し、ソフトウェアの観点から要求仕様書をチェックします。一方、顧客レビューでは、顧客の運用イメージも踏まえて意図した要求仕様書となっているか確認します。また、顧客レビューが完了すると、要求仕様が完成し、要求仕様フェーズが完了です。長かったですね。

 要求仕様フェーズは、学校の授業でもなかなか取り上げづらいところです。本シリーズをきっかけに、ソフトウェア開発がどのような手順で進んでいくかのイメージができれば幸いです。

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【 筆者紹介 】
山浦 恒央(やまうら つねお)

東海大学 大学院 組込み技術研究科 非常勤講師(工学博士)


1977年、日立ソフトウェアエンジニアリングに入社、2006年より、東海大学情報理工学部ソフトウェア開発工学科助教授、2007年より、同大学大学院組込み技術研究科准教授、2016年より非常勤講師。

主な著書・訳書は、「Advances in Computers」 (Academic Press社、共著)、「ピープルウエア 第2版」「ソフトウェアテスト技法」「実践的プログラムテスト入門」「デスマーチ 第2版」「ソフトウエア開発プロフェッショナル」(以上、日経BP社、共訳)、「ソフトウエア開発 55の真実と10のウソ」「初めて学ぶソフトウエアメトリクス」(以上、日経BP社、翻訳)。


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