プラント工場は、広大な敷地に多くの巨大な設備が配置されており、屋外となることも多いため、通信や通信機器の置かれる環境は複雑かつ過酷になります。
代表的なユースケースとしては、「過酷環境の生産設備の予防保全・故障予知」「カメラを用いた不法侵入検知」などが挙げられます。
これらのユースケースにおいては、広範囲なデータ収集もあれば、リアルタイム性が必要なものや、低消費電力が重要な課題となるものなど、複数の無線通信規格を組み合わせて対応することが求められるため、無線通信技術の選定が生産効率や安全性に直結します。
プラント工場では、予防保全や遠隔監視のために多くのセンサーが設備に取り付けられています。
これらのセンサーは、水量、温度、圧力、振動、湿度など、さまざまなデータを計測し、現在の状態を把握したり、異常の兆候を検知したりすることで、設備の故障を未然に防ぐことに寄与しています。従来の定期点検に加えて、無線通信技術を活用したモニタリングにより、異常が発生する前に迅速な対応が可能となります。
特に広い敷地を持つプラント工場では、データの収集にLPWAなどの長距離通信が導入されます。LPWAは低消費電力で広範囲の通信が可能であり、バッテリー駆動のセンサーにも対応します。
一方、リアルタイム性が求められる場合や、高速なデータ転送が必要なケースでは、キャリア5G、ローカル5Gなどが有効となります。これまでは重要な設備のモニタリングは有線ネットワークで行っていましたが、これからは5Gなどの信頼性、低遅延性が高い無線方式の活用も可能となっていきます。
このようなシステムを導入することで、設備への対策が進み、突発的なダウンタイムを最小限に抑えることが可能です。結果として、設備の寿命を延ばすと同時に、プラント全体の稼働率の向上にも寄与すると考えられます。
一方、このような環境では温度・湿度による壁や床の水分量変化が、反射波の電波減衰に影響を与え、受信信号強度が変動する場合があるので、一定期間を通じてデータの収集状況を確認し、対策の要否を検討する必要があります。
また、プラント工場では、屋外設備に無線センサーを取り付けることも多くなります。その場合は、天候の変動(特に降雨)の影響が考えられるため、設置後に一定期間の通信テストを行い、問題が発生しないかの確認も必要です。
プラント工場では、広い敷地や重要または危険な設備を持つため、不法侵入者の検知やセキュリティの確保が重要な課題となります。カメラやセンサーを設置し、無線通信技術を活用してリアルタイムに映像やデータを監視するシステムが効果的です。
特に、高精細な映像が必要な場合には、Wi-Fi 6やローカル5Gなどの高速無線通信技術が適しています。迅速な映像伝送により不審者を即座に発見し、対応を行うことができます。
その他、Wi-Fi HaLowなど、長距離でも一定の映像・画像伝送ができる無線通信規格もこれから活用されていくことが期待されます。
なお、広範囲を監視するために通信のカバーエリアを拡大させる必要がある場合は、ローカル5GとメッシュWi-Fiなど、異種の無線通信規格を組み合わせることも一案です。
次回は、実際の無線通信技術の導入時に担当者が準備すべき事項や、導入ステップなどについて解説していきます。
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