NTTアクア 代表取締役社長の山本圭一氏は「植物工場と比べて単価を上げやすく、高付加価値な商品として展開しやすいのも魚介類の特徴だ。陸上養殖で育てた魚を地域のブランドとして発信するなど、地域の産業創出にも貢献できるのではないか。他と同じ魚を養殖しても意味がないので、循環式陸上養殖システムで対応する魚種は、高単価で、その地域の水温で養殖しやすいものを提案していく。冬季に漁に出られる回数が大きく減少する地域もある。季節ごとの収入減を補う手段としても有益だと考えている。販売のサポート体制まではまだ整っていないが、グループ会社やパートナー企業を通じて販売促進にも取り組んでいきたい」と語った。
日本の中で過疎地域は国土の6割、市町村数の半数を占めると言われている。人口減少とともに魅力的な仕事が少なくなることで人口がさらに都市部に湧出し、地域の少子高齢化が加速するとの指摘もあるという。2050年までに消滅する可能性のある自治体は、全国に744あるとされている。
また、カロリーベースでの食料自給率が100%前後の国も多い先進国の中で、日本はかなり低い38%だ。食用の魚介類に関しては、自給率は世界有数の漁獲量を誇っていた1964年の113%をピークに減少しており、現在は60%弱で推移している。輸入にも大きく頼っているが、魚を食べる量が減っていることも影響している。
世界の人口増加に伴い、2025〜2030年ごろに動物性タンパク質の需要が供給を上回るタイミングが来ると予測されている。供給が年率1%で増加するのに対し、需要は年1.7%で成長していく。タンパク質の取り合いに備えて、自給率を引き上げていくことが食料安全保障につながるという。
動物性タンパク質の確保と環境負荷抑制の両立において、魚の養殖は注目されている。メタンを排出する牛などと比べて環境負荷が低い上に栄養価も高いため、成長産業だとNTTアクアは期待を寄せる。
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