松下幸之助を生成AIで再現、「怖いくらい似ている」と親族驚く人工知能ニュース(2/2 ページ)

» 2024年11月28日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]
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70歳ごろを再現、関西弁も自然に

 開発したシステムは、ユーザーが入力した音声の認識→質問への回答生成→音声の合成→松下幸之助氏が話している動画の生成という4つのAIで構成されている。質問への回答の生成にはLLMを使用する。松下幸之助氏の過去の著作や発言から関連する情報を検索して利用するRAG(検索拡張生成)という技術を用いた。合成用の音声や顔画像も、過去に蓄積された資料を基にしている。音声入力に対し、10秒程度で返答や音声、映像を生成する。

4つのAIで構成[クリックで拡大] 出所:パナソニック ホールディングス

 膨大な資料に対しては、テキストデータに含まれる古い言い回しや音声データに含まれるノイズなどにデータクレンジングで前処理を施し、返答や音声の生成精度を高めた。リアルタイムな生成を実現するため、長い文章を短く区切って音声合成や動画の生成を行う非同期処理などで高速化を実施した。

 さらに、松下幸之助氏をテーマとして扱う研究者や直接指導を受けた人にAIの出力結果の正確さや“らしさ”、返答の長さや話し方の速さなどを評価してもらうことで、データに現れないドメイン知識によってAIの性能を改善した。

 開発過程でAIを確認した松下幸之助氏の親族からは「怖いくらい似ている」との反応があったという。関西弁での発話も自然さを追求し、松下幸之助氏の70歳ごろ(昭和40年代、1965〜1975年ごろ)の話し方を再現した。「それが話すスピードも含めて一番聞き取りやすい声だった」(パナソニック ホールディングス)。

長い文章を分割して処理[クリックで拡大] 出所:パナソニック ホールディングス

松下幸之助AIによる回答の例

Q いい人生とは長生きすることでしょうか?

A まあ、いい人生とは単に長生きすることだけではないんであります。もちろん長生きすることは大事でありますけれども、それだけでは不十分であります。 私が思うに、いい人生というのは、よき生産とよき消費の営みだと考えております。つまり、日々の生活の中で物心両面にわたる幅広い生産と消費をしながら、絶えずそれを高めようとすることが大切であります。

 人間は他の生物とは違って、理性や知恵才覚を持っております。これを活用して、よりよき生活、より人生を実現することができるんであります。例えば、仕事を通じて社会に貢献し、家族や友人との関係を大切にし、心の豊かさを追求することがいい人生の一部であると考えます。

 また、失敗を恐れずに挑戦し続けることも重要であります。成功とは失敗の積み重ねであり、失敗から学び、成長することが大切であります。そうすることで人生の意義や目的を見つけることができるんであります。

 さらに心の持ち方も大事であります。青春の心を失わず、 いつも生き生きとして希望にあふれていることが、いい人生を送るための秘訣であります。年齢に関係なく、心の若さを保つことが大切であります。

 結局のところ、いい人生とは、長生きすることだけでなく、日々の生活の中で自分自身を高め、他者とともに幸せを築くことができるかどうかにかかっているんであります。そういう意味で、長生きすることは1つの要素にすぎないと考えるんであります。

Q AIの導入が進むと人手はいらなくなりますか?

A まあ、AIの導入が進むことで、人手がいらなくなるという見方も確かにありますわな。しかし、実際いうと、それは一面の真実であって、全体を見渡すと少し違うんであります。

 AIが進化して単純作業や反復作業を代替することは確かに可能でありますけれども、それによって人間の仕事は全てなくなるわけではないんですわ。むしろ、AIが得意とする部分を任せることで、人間はより創造的で価値の高い仕事に集中できるようになるんであります。これが、私が常々言うております適材適所の考え方に通じるものであります。

 また、AIの導入によって新たな職種や産業が生まれることも期待されます。過去の産業革命の例を見ても、新しい技術が導入されるたびに、それに伴って新しい仕事が生まれてきたんですわ。ですから、AIの導入が進むことで、逆に新しい雇用機会が生まれる可能性も大いにあるんであります。

 それに、AIはあくまで道具であり、人間の知恵や創造力を補完するものであります。人間の感性や直感、 そして人間同士のコミュニケーションは、AIには代替できない部分であります。これらの要素があるからこそビジネスや社会は豊かに発展していくんであります。

 ですから、AIの導入が進むことで人手がいらなくなるというのは一面の真実でありますが、それが全てではないんですわ。むしろ、AIをうまく活用することで、人間の能力を最大限に引き出し、新たな価値を創造することができると信じております。これが私の考える人間尊重の経営哲学に通じるものであります。

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