生成AIに関心を示し、自社サービスや業務への導入を検討する製造業は多い。だが、生成AIで何かできるのか、どういったサービスを作れるのかをイメージし、具体化していく仕組みが社内にあるだろうか。そのための仕掛けとして、東京都内に生成AIの共創施設をオープンしたDNPの和田剛氏と大竹宏之氏に話を聞いた。
2023年12月4日、大日本印刷(DNP)が東京都新宿区に「DNP生成AIラボ・東京」をオープンした。名称に表れている通り、生成AI(人工知能)を用いた業務やサービスへの適用に関するアイデアの具現化を支援する施設だ。
オープンイノベーションの拠点は全国に多く存在するが、生成AIに特化した共創施設を設立する例は「まだ少ない」(DNP担当者)。生成AIに関心を示し、自社サービスや業務への導入を検討する製造業は多くとも、それを具体化する仕組みや仕掛けが必ずしも社内にあるとは限らない。
DNP 情報イノベーション事業部 ICTセンターシステムプラットフォーム開発本部 DX推進部 部長の和田剛氏は「アイデアをアイデアのままにしておくのはもったいない。具現化していく仕掛けが必要になる」と語る。同施設での共創活動によって何ができるのか。和田氏とDNP 研究開発本部 ICT統括室室長の大竹宏之氏に話を聞いた。
DNP生成AIラボ・東京は地下1階から地上2階までの3階建ての構造だ。地下1階の「デモ体験ゾーン」ではDNPが作成した生成AIのユースケースを体験できる。2023年12月上旬時点で、ユースケースが284件、実際に動作するアプリケーションのプロトタイプが26件ある。
2階は「対話ゾーン」で、大型スクリーンなどを備えた会議室のようなスペースになっている。デモ体験ゾーンで発想した生成AI活用のアイデアを、DNPの担当者とのディスカッションで具体化していく。企業の実現したいことや、生成AIが生む新しい可能性まで自由に語り合う。1階は「開発/工房ゾーン」で、生まれたアイデアを基に、Googleのノーコードツール「AppSheet」や3Dプリンタ、レーザーカッターなどでプロトタイプを試作できる。
プロトタイプとして用意しているものの一例として、社内での落とし物を探すアプリがある。拠点内の落とし物を撮影して画像をアップロードすると、種類などをAIが自動的に解析し、手入力した場所情報などと併せてデータベースに登録する。落とし物の内容に応じて自動生成されたキャラクターの画像をコレクションできるという遊び要素も備える。
この他、風景の写真から説明文を自動生成するアプリなどさまざまなものを体験できる。これらの多くは、OpenAIの「ChatGPT」やAnthropicの「Claude」といった対話型AIサービスをベースに開発している。
開設から間もないが、すでに問い合わせや相談に訪れる企業が多くいるようだ。プレオープン期間中には製造や金融など21社が訪問して、議論を交わしたという。話し合う中で、生成AIをプライベートブランドのパッケージデザイン開発の効率化に使えないかという話も浮上したという。生成AIで既存のパッケージデザインから共通する要素を抽出して、新規デザインのベースとして活用する。今後、DNP生成AIラボ・東京で、実際に運用に耐え得るかをPoC(概念実証)を通じて検討するという。
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