NTTは、日本ではまだ自動運転に対する社会受容性が確立されておらず、自動運転に対する不安が少なくないとみている。テクノロジーの開発だけでなく、地域のステークホルダーとのコミュニケーションで丁寧に受容性を高めていく方針だ。自動運転技術を手掛けるプレイヤーとの連携に加えて、各地域のニーズ(ルートや輸送量、乗車人数)を踏まえた現実的なサービスを提供することが、受容性だけでなく持続可能性にもつながると見込む。
NTTの清水氏は「自動運転の社会実装はNTTだけでやることではない。われわれは最大限努力すべきだし、自動車メーカーや通信会社などさまざまな企業が取り組むことで日本の市場が作られていく。その点ではみんなで協力していくことなのではないか」とコメントした。
「自動運転技術は中国や米国が先行しているが、センサーを大量に搭載し、AI技術を発展させるにはコストがかかる。コストがかかりすぎて実装できず、サービスが事業として成立しないのであればサステナブルではない。社会受容性を高めるには、早めに実装していくことや、ニーズに合ったコスト最適である状態をつくっていくことが重要だと考えている。われわれがやるべきは、高度なセンサーや生成AIなど最新技術に食いつくことではない」(清水氏)
NTTは中央研修センタ(東京都調布市)に実証拠点を立ち上げた。ソリューションの開発や試乗による走行性能の把握、さまざまなシーンを想定した実証を行い、オペレーションの最適化や乗車体験価値を確認した上で個別の実証実験に展開する。
また、実証拠点を設けたことでNTTグループのメンバーがすぐに車両に触ることができ、実物を使って車両管理のオペレーションを検討できることがノウハウの蓄積になるという。実証拠点での試乗を通じてパートナーとの連携を深める狙いもある。
May Mobilityとも、実証拠点で技術検証を行い、ローカル5Gの車載化や遠隔監視システムの開発、遠隔監視の実証などを行う。NTTドコモがすでに公道で実証を行っているが、NTTとしても2024年度中にMay Mobilityの車両の公道実証を行う予定だ。
中央研修センタには、地域循環型社会に向けた価値創造に取り組むNTTグループのソリューションを集めたショーケース「NTT eCity Labo」も構えている。自動運転車による移動サービスもそのショーケースの1つとなり、ローカル5G対応の遠隔自動運転車をアピールする。すでにティアフォーの中型バスタイプのEVが自動運転車として紹介されているが、May Mobilityのバンタイプの自動運転車も加えることでオンデマンドタクシーなどさまざまなニーズに対応するとしている。
ドライバーが不在のレベル4以上の自動運転になると遠隔監視が不可欠になり、それを支える通信が重要になる。ローカル5Gでキャリア通信を補完する冗長構成としたい考えだ。自動運転車だけでなく、製造現場や物流、建設などでのローカル5G活用も見込んでいる。
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