東京大学は、細孔内が親水的で、高い耐溶剤性と耐真空性を備える新たな結晶スポンジを開発した。従来と比べて細孔内に取り込める有機化合物の範囲が拡大し、実装化に向けて前進した。
東京大学は2024年11月6日、細孔内が親水的で、物理的、化学的に高い耐溶剤性、耐真空性を備える次世代の結晶スポンジを開発したと発表した。従来と比べて細孔内に取り込める有機化合物の範囲が拡大し、創薬など各種分野への展開が期待でき、実装化に向けて前進した。
ダイセルと共同で実施した研究では、構造解析技術の「結晶スポンジ法」に使う結晶スポンジ材料を調査し、有機配位子にアミド基を導入した次世代の結晶スポンジを新たに開発した。物理的かつ化学的に高い安定性を持ち、細孔環境が従来の結晶スポンジとは逆の親水性であるため、極性が高い分子に適用できるようになった。
また、真空下の加熱により、細孔内の溶媒分子を完全に取り除き、空にしても安定的な構造を保持できることが分かった。この物性を生かした、ガスクロマトグラフ(GC)分取と結晶スポンジ法を組み合わせたシームレスな新規構造解析手法「GC分取×ダイレクト結晶スポンジ法」の開発を進めた。
溶剤に溶解した複数の香気成分(5mg/mL)をガスクロに入れ、カラム分離した各香気成分を分取管に詰めた結晶スポンジに包接させ、結晶スポンジを取り出してX線構造解析をしたところ、それぞれの香気成分の構造を決定できた。このように、材料としての安定性が増したことで取り扱いが容易になり、結晶スポンジ法の社会実装化に向けて大きく前進した。微量で高い揮発性があるため、解析が困難だった環境物質や臭気成分の構造解析も可能とした。
今後、結晶スポンジ法の社会ニーズを正確に理解した上で社会実装を進め、循環型社会の構築に貢献していく。
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