一方、イタリアの医療/ライフサイエンス企業の事業拡大に向けた動きも活発である。例えば2024年10月9日〜11日、パシフィコ横浜で開催された「BioJapan 2024」では、イタリア大使館貿易促進部(関連情報)が出展したイタリアパビリオン(関連情報)に、以下の5社が参画している。
本連載第15回で米国市場における3Dプリンタを利用した医療機器について取り上げたが、上記のうちWASPは、イタリアを起点として欧州域内外向けに3Dプリンタ事業を展開している事例である。同社の事業領域には、医療、介護福祉、健康/ウェルビーイング分野も含まれており、イタリアならではのデザイン力がデジタルを介したモノづくりに生かされている。
なお、イタリアの場合、1978年に設立された国民健康保健サービス(SSN)が、全てのイタリア市民および合法的な外国人居住者にユニバーサルヘルスカバレッジ(UHC)を提供している。中央政府は、全国の給付パッケージを決定し、地域の医療システムへの資金配分や監督を担う。他方、各地域では、地方保健局(AUSL)を通じて、資金調達、計画、および地元レベルでのサービス提供を担う仕組みになっている。
世界保健機関(WHO)欧州地域事務局の「イタリア:保健医療システム2022」(関連情報)によると、2019年時点で、イタリアの医療インフラは995の病院、8801の外来診療所、1145のリハビリ支援施設、そして1万6270の居住型/半居住型施設で構成されている。このうち病院と外来診療所を見ると、公立がそれぞれ51.8%および87%を占める一方、リハビリ支援/居住型/半居住型施設は主に営利および非営利の認定組織が占めている。
このような背景から、イタリア市場でeヘルス関連サービスを提供する企業は、公立医療施設を想定したプライバシー/セキュリティ要求事項を順守することが必要となる。本連載第93回で触れた一般データ保護規則(GDPR)に加えて、第78回で触れた欧州NIS指令2も、2024年10月18日より域内完全適用となっており(関連情報)、イタリア国内でどのように実装/運用されるのか注目される。
2021年9月8日、イタリア閣僚評議会議長府デジタルトランスフォーメーション局(DTD)と国家サイバーセキュリティ庁(ACN)は、「イタリアのクラウド戦略」(関連情報)を公表した。本戦略は、中央および地域の行政機関(地方保健局や公立医療施設を含む)におけるクラウドソリューションの実装と管理のための戦略的方向性を提供することを目的としており、以下のような構成になっている。
本戦略では、イタリアにおけるクラウドコンピューティングの課題として、以下の3点を挙げている。
このような課題を解決するために、イタリアのクラウド戦略は、以下の3つの戦略的ガイドラインに基づくとしている。
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