ヤンマーHDは、ディーゼルエンジンなどの原動機を中核として、原動機が生み出す駆動力によって価値を生み出す農業機械や建設機械、マリンなどの事業を拡大してきた。今回のYPVでは、農業機械に代表される大地(Land)、建設機械に代表される都市(City)、マリンに代表される海(Sea)の他、柔和剛健で重視する人(Human)を新たな要素として加えて、2035年を想定した“ありたき姿”としてコンセプトデザインを発表した。それぞれ、農業機械が「YPV-L」、建設機械が「YPV-C」、マリンが「YPV-S」、そして人と機械をつなぐインタフェースとなるHMI(Human Machine Interface)が「YPV-H」となる。
ヤンマーHD デザイン部 部長の土屋陽太郎氏は「YPVは、市場が異なる各事業のデザイン体系をプラットフォーム化しデザイン開発の効率化することで、顧客価値を最大化していく狙いがある」と説明する。
YPV-LやYPV-C、YPV-S、YPV-Hが2035年を想定しているのは、これらを到達すべき目標として掲げながらデザインエレメントに落とし込んでバックキャスティングを行うためだ。「このためそのままの形で商品化はしない」(土屋氏)。これと併せて、現在のデザインエレメントからのフォアキャスティングも行い、近い将来に実用的な形で商品化していくことになる。
YANMAR DESIGN みらいのけしき展で初公開となったのが、コンセプト農機であるYPV-Lの原寸大モデルだ。車格は全長3000〜3410×全幅1490〜1510×全高1930〜2325mmの「YT3」相当で、パワートレインはディーゼルエンジンだけでなく電動システムを含めたマルチパワートレインを想定している。
どのようなパワートレインでも必要になる冷却系(エンジンの場合はラジエーター)をエンジンルームから分離することで、冷却効率の向上や柔和剛健の柔和につながるデザインの抜け感の実現につなげた。また、外骨格フレームの採用によって、キャビンからの視界確保とカスタマイズ性の自由度向上も目指している。タイヤは、軽量化などにつながるエアレスタイヤを採用した。
これらの新たなレイアウトの採用により、キャビンを現行よりも中央に寄せることで高い居住性を確保している。キャビン位置を車両前側に寄せることで、後輪タイヤ間の幅となるリアトレッドのデザインの自由度も高まり、さまざまな地面や畝(うね)などの走行路への対応が容易になるという。
急激な担い手不足が課題になっている農業では、農作業の自動化に対応する農機が求められている。YPV-Lを自動農機とする場合、キャビンスペースを自動化システムや電動システムなどに置き換えることも想定されている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.