製造現場のデジタル化を進めていくには、モノづくりのさまざまなコンテキストや置かれている条件などを読み解いて、技術をあてはめ、それを活用できる仕組みなどを構築していく必要がある。こうした製造現場の課題からシステム構築までを類型化して進めやすくする仕組みとなる「スマートシンキング」や、そのために発生するデータ連携のための仕組みである「オープンフレームワーク(COIFなど)」は、以前から紹介され、実際にIVIの活動でも活用が進んでいるが、今回のIVIシンポジウムでは新たに「デザインアプローチ」について詳しく説明が行われた。
このデザインアプローチは、実際にシステムを構築していくためのデータモデルなどをモノづくりにおけるコンテキストを生かした形で表現する手法を示したもので、IVIではそのために「PSLX(Product and Service Lifecycle Transportation)」と「IDDT(Industrial Deep Data Templates)」という2つの仕組みを用意している。
PSLXは製造ドメインに特化した情報モデルで、モノづくりの業務フローを容易に詳細までモデル化して記述することができる。データモデルは標準で約8割カバーできるとしており、製造業務の情報モデルを簡単に構築できる。
業務内容に応じたテンプレートなども用意しており、より円滑にモノづくりのデジタル化を進めることができる。
一方でIDDTは、データの多義性や因果性、分散性に留意した上で扱うためのデータテンプレートだ。一般的なデータを大量に集めるビッグデータに対し、モノづくりに関するデータは、量は少ないもののデータの諸条件を掘り下げて詳細まで詰めた形でデータを集めて活用する必要があり、これに対応した。「製造業で扱うデータはほとんどがディープデータになるが、ビッグデータと同じように考えていては活用しきれないケースも多い。ディープデータを有効活用するための仕組みを提案する」と西岡氏は述べている。
スマートシンキングの各種ツールやオープンフレームワークのツールや仕組みに加え、これらのデザインアプローチの仕組みを用いることで、モノづくりのデータモデルやスマート化をより円滑に行い、より早く実装し改善サイクルを回していくことができるようになる。こうした仕組みそのものをIVIでは今後、世界に積極的に発信していく方針だ。
西岡氏は今後の10年の製造業の展望として、IVIが取り組んできたモノづくりとITの融合とその仕組みの普及のロードマップを描き「10年後には、IVIが訴えてきたものが普及してコモディティ化し、当たり前のものになっていくかもしれない」(西岡氏)と語る。
IVIは「未来プロジェクト」として、製造業の3つの類型として、モノづくりが全てデータでつながり離れていても生産できる「コネクテッド工場」、分散型で利用者に近いところでモノづくりを行う「コンビニ工場」、モノづくり能力をシェアする「シェアリング工場」を描いているが、IVIの生み出した手法やツールが普及することで、これらの新たな製造業の姿をより早く実現することを目指している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.