神戸大学は信州大学との共同研究で、リグノセルロースの複雑な分子構造を再現した天然基質の化学合成に成功した。従来の人工基質では困難だったリグニン−キシラン間架橋結合の酵素分解反応を解析できる。
神戸大学は2024年9月18日、信州大学との共同研究で、リグノセルロースの複雑な分子構造を再現した天然基質の化学合成に成功したと発表した。リグニンとキシランをつなぐ接点周辺の構造を含み、従来の人工基質では困難だったリグニン−キシラン間架橋結合の酵素分解反応を解析できる。
研究グループは、開発した天然基質を用い、リグニンとキシランとの架橋点を分解するエステラーゼと呼ばれる酵素の反応解析を実施した。その結果、従来の人工基質を用いた活性評価では分からなかった高い触媒効率を示すことが明らかとなった。
また、計算科学シミュレーションにより、エステラーゼの分子認識に重要な基質分子の構造的特徴を解明した。
木や草などの植物を原料とするリグノセルロースは、バイオ燃料やバイオプラスチックの原料にできる地球上で最大の再生可能エネルギー源として注目されている。しかし、セルロース、キシラン、リグニンの3成分が複雑に絡み合った複合体で、これらの3成分を分離しづらいことが利用の妨げとなっていた。
天然構造を再現した天然基質により、リグニンとキシランとの架橋点分解に対する指向性スクリーニング(target-directed screening)が可能となり、高効率なリグノセルロース分解技術の開発が期待される。
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