Siパワー半導体でSiCと同等レベルの低損失を実現、シャープのFCR回路技術組み込み開発ニュース

シャープは、技術展示イベント「SHARP Tech-Day'24」において、Siパワー半導体を用いて次世代に位置付けられるSiCパワー半導体と同等レベルの低損失を実現できるFCR回路技術に関する参考展示を行った。

» 2024年09月19日 06時30分 公開
[朴尚洙MONOist]

 シャープは、技術展示イベント「SHARP Tech-Day'24」(2024年9月17〜18日、東京国際フォーラム)において、Si(シリコン)パワー半導体を用いて次世代に位置付けられるSiC(炭化シリコン)パワー半導体と同等レベルの低損失を実現できるFCR(Fast Commutation Rectifier)回路技術に関する参考展示を行った。数年以内に個別部品を用いたインバーター回路を家電向けに開発した後、モジュール化やチップレベルの集積による小型化を進めていく方針である。

シャープのFCR回路技術を採用したインバーター回路 シャープのFCR回路技術を採用したインバーター回路。左から、現在開発中の個別部品を用いた回路基板、1パッケージに集積したパワーモジュール、チップレベルで集積したトランジスタの順番に並んでいる[クリックで拡大]

 Siパワー半導体のスイッチング動作時における損失は、寄生ダイオードに起因して流れる逆回復電流によるところが大きい。FCR回路技術では、Siパワー半導体に対して低耐圧ながら高速電流を流せるSiパワー半導体を直列に配置し、キャパシターを使って同期動作させることで、スイッチング動作を行うSiパワー半導体に流れる逆回復電流を抑制する。FCR回路にすることで、従来のSiパワー半導体単体と比べてスイッチング損失は4分の1に、三相インバーター回路に適用する場合には電源全体の損失を2分1に低減できるという。

FCR回路技術の原理(上)と個別部品を用いたインバーター回路基板の構成(下) FCR回路技術の原理(上)と個別部品を用いたインバーター回路基板の構成(下)[クリックで拡大] 出所:シャープ
FCR回路技術の特徴 FCR回路技術では、高耐圧デバイスで低速に流れることで損失が大きくなる逆回復電流について、低耐圧デバイスで高速に流すことにより損失を抑えている[クリックで拡大] 出所:シャープ

 耐圧600V/定格電流40Aのデバイスで比較すると、従来のSiパワー半導体単体は単価が400円、スイッチング性能係数が0.05であるのに対し、SiCパワー半導体はスイッチング性能係数が0.25と大幅に上回るものの、単価も1200円と大幅に高くなってしまう。これに対してFCR回路技術は、単価は500円とSiパワー半導体単体とほぼ同程度であるとともに、スイッチング性能係数は0.20〜0.25とSiCパワー半導体並みに高められる。

耐圧600V/定格電流40Aのデバイスにおける単価とスイッチング性能係数の比較 耐圧600V/定格電流40Aのデバイスにおける単価とスイッチング性能係数の比較[クリックで拡大] 出所:シャープ

 FCR回路技術を適用するSiパワー半導体としてはSi-MOSFETを想定しており、白物家電などで一般的な耐圧1000V以下のインバーターやDC-DCコンバーター向けを想定している。SiCやGaN(窒化ガリウム)などの次世代パワー半導体の世界市場規模は、2035年に3.5兆円となり、Siパワー半導体の4.3兆円に肩を並べることが想定されているが、低コストで省電力を実現できるFCR回路技術により、次世代パワー半導体の市場を獲得して行きたい考えだ。

FCR回路技術が想定する市場 FCR回路技術が想定する市場[クリックで拡大] 出所:シャープ

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