工場建屋間の運搬を無人化する屋外自動搬送車、都内の新オフィスで体験機会増無人搬送車

eve autonomyは羽田イノベーションシティ内に設けた羽田オフィスで、屋外自動搬送ソリューションのデモを披露した。

» 2024年09月13日 08時45分 公開
[長沢正博MONOist]

 eve autonomyは2024年9月6日、東京都大田区にある羽田イノベーションシティ内に設けた羽田オフィスの開所式を行った。

会場で披露した自動搬送ソリューション「eve auto」のデモンストレーション。ゲートと自動連携したり、障害物を検知して停止したりしている。[クリックで再生]

 eve autonomyは2020年に設立された、ヤマハ発動機とオープンソースの自動運転ソフトウェアを開発するTIER IV(ティアフォー)との合弁会社だ。

 大きな工場や物流施設では、複数の建屋の間で製品や部品の搬送を行うケースがある。雨や風などの影響を受け、屋内と比べると路面の状況も悪い。既存のAGV(無人搬送車)やAMR(自律型搬送ロボット)で対応するには距離も含めて条件が難しく、トラックで運ぶには短すぎる搬送距離を想定用途とする。従来はフォークリフトが利用されているが、深刻化する人手不足と安全性に課題を抱えている。

 そこでeve autonomyでは、ヤマハ発動機のゴルフカートとティアフォーのソフトウェア「Autoware」を活用して私有地内の屋外搬送の自動化に取り組み、2022年から屋外搬送の自動化サービス「eve auto」を提供している。

新しい羽田オフィス[クリックで拡大]

 このサービスは、車両の提供やメンテナンス、ソフトウェアのアップデート、自動運転保険などがパッケージ化されたサービスとなっている。車両はけん引で1.5t、積載で300kgを搬送でき、最高速度(自動運転時)は時速10km。7度の傾斜(自動運転、1tけん引時)や±3cmの段差(静止状態から)を乗り越えることができる。上部に1つ、前方に3つの3D-LiDARを備えており、

 これまでにヤマハ発動機や三菱ふそうトラック・バス、富士電機やパナソニックなどで導入され、国内40以上の拠点で約60台の導入実績がある。

 eve autonomy 代表取締役 CEOの星野亮介氏は「プラント系の工場は広大な敷地があり、そこで定期的なサンプル回収にeve autoが使われている。それまでは人が自転車に乗って回収していた。製造業では、夜間の工程間搬送や、フォークリフトやけん引車で行っている業務の置き換えに使われている」と語る。

 新オフィスは展示エリアや従業員の執務エリア、ミーティングエリア、メカニックエリアを持ち、eve autoで使う無人搬送車両が展示され、ユーザーの訪問に合わせてオフィスエリア前コンコース(屋外)での無人走行デモンストレーションも行うことができる。羽田空港の隣接地にオフィスを構えることで、ユーザーからの認知度の向上や体験機会の増加につなげる他、首都圏の人材獲得も図る。

羽田オフィスでは無人走行デモンストレーションも可能に[クリックで拡大]

 これまで、ユーザーが無人搬送車に触れるには、導入しているヤマハ発動機の浜北工場(静岡県浜北市)の見学や、eve autonomyの竜流ショールーム(静岡県磐田市)の訪問、有償の1日体験導入をするしかなかった。

 屋外自動搬送車輛は国内で2030年に年間1000台超の市場規模になると想定している。「いずれ屋外の自動搬送が当たり前の時代が来る。これまではお試しの1台目が多かったが、2024年は納得の2台目(複数台)をスローガンとして掲げている。将来は屋外自動搬送といえばeve autoという存在になることを目指している」(星野氏)。

 ヤマハ発動機 新事業開発本部長の青田元氏は「われわれとしては合弁という仕組みは結構少ない。日本の製造業として、自分たちだけでやりたいという気持ちは今でもある。だが、この事業を大きく育てていくために、自分たちだけではできないことをいろんな人たちと一緒にやっていこうという視点でこの事業は始まった」と語る。

 ティアフォー 代表取締役CEO兼CTOの加藤真平氏は「目的地の入力など戦略上の機能のみを人が入力し、人は運転に介入しない自動運転をレベル4と呼ぶが、eve autoは国内で唯一、本格的に商用サービスに突入しているレベル4の自動運転だ」と期待する。

左からヤマハ発動機の青田氏、eve autonomyの星野亮介氏、ティアフォーの加藤真平氏[クリックで拡大]

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