東北大学は、全固体リチウムイオン電池の保護層を最適化する計算フレームワークを開発した。充放電時に発生する、固体電解質の分解抑制に用いるコート層の設計に必要な特性や構造を定量的に分析した。
東北大学は2024年7月24日、全固体リチウムイオン電池(SSB)の保護層(コート層)を最適化する計算フレームワークを開発したと発表した。名古屋大学、島根大学と共同で、コート層の設計に必要な特性や構造を定量的に分析した。
コート層は、充放電時にSSBの電極材料と固体電解質の界面で生じる、固体電解質の分解を抑制するために用いられる。同研究では、固体内のイオンや電子伝導に関するWagner理論により、一次元SSBモデルの固体電解質とコート層内のリチウム(Li)化学ポテンシャル(μLi)分布を理論的に計算した。
その結果、コート層の厚みや電子導電率(σele)のみならず、固体電解質の厚みやσele、電極電位も同時に制御することが、固体電解質保護効果の最適化に必要であることが明らかとなった。コート層の厚みはSSBの内部抵抗増加を引き起こすため、コート層のイオン導電率σionも合わせて考慮する必要がある。
これに基づき、研究チームはSSBの各構成要素から最適なコート層の厚さ、σele、σionを導き出せる計算フレームワークを開発。内部抵抗増加を一定範囲に抑えながら固体電解質を保護できるSSB用コート層を、効率的かつ確実に設計できる。
リチウムイオンの電池電解質を難燃性の固体電解質に置き変えたSSBは、安全性やエネルギー密度などから、次世代型蓄電池として注目されている。コート層の設計指針により、高性能で長寿命なSSB開発の進展が期待される。
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