サステナブルなモノづくりの実現

ブリヂストンがNanoTerasuを活用し材料や効率的なゴムリサイクル技術の開発を加速研究開発の最前線

ブリヂストンは、東北大学青葉山新キャンパス内に設けられた3GeV高輝度放射光施設「NanoTerasu(ナノテラス)」を活用しタイヤ材料の研究開発を開始した。

» 2024年05月20日 07時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 ブリヂストンは2024年5月16日、東北大学の青葉山新キャンパス(仙台市青葉区)内に設けられた3GeV高輝度放射光施設「NanoTerasu(ナノテラス)」を活用したタイヤ材料の研究開発を開始したと発表した。

 NanoTerasuを活用して、同社は高分子材料の観察に有効な軟X線を活用しタイヤ製品に広く使用されている高分子材料を分子スケールで観察していく。高分子材料の特性を分子スケールで理解することで、商品設計基盤技術「ENLITEN(エンライトン)」の進化を実現する材料や、資源循環率を極限まで高めたゴムの開発を進める。ENLITENは、従来のタイヤ性能を向上させた上で、タイヤに求められる多様な性能を、顧客やモビリティごとにカスタマイズする商品設計基盤技術だ。

3GeV高輝度放射光施設「NanoTerasu」と「NanoTerasu」を用いた研究開発の様子 3GeV高輝度放射光施設「NanoTerasu」と「NanoTerasu」を用いた研究開発の様子[クリックで拡大] 出所:ブリヂストン

NanoTerasuを活用し架橋の化学構造を分子レベルで観察

 ゴムは、硫黄を用いて分子と分子の間を結び付ける架橋と呼ばれる化学反応により、その形状を保ち、伸び縮みする性質(弾性)を発揮する。つまり、架橋はゴムのさまざまな性質を発揮するためには欠かせないものだ。一方で、架橋は複雑な化学構造であるため適切に切断することが難しく、それがゴムをリサイクルして原材料に戻す際に大きな妨げになっていた。タイヤ性能とサステナビリティを高いレベルで両立するためには、架橋の化学構造を正確に把握する必要がある。

 そこで、ブリヂストンは、東北大学国際放射光イノベーション・スマート研究センター 教授の西堀麻衣子氏とともに、NanoTerasuを活用し架橋の化学構造を分子レベルで観察することで、そのメカニズムの解明に取り組む。これにより、高分子複合体設計による新材料や効率的なゴムのリサイクル技術の開発につなげていく。

 ブリヂストンは、「ゴムを極める」「接地を極める」「モノづくりを極める」の3つの「極める」を軸に、技術イノベーションを加速させている。「ゴムを極める」において、同社の強みであるゴムを「見る」「解く」「操る」の技術を進化させることで、より強くしなやかな革新材料だけでなく、地球環境にも配慮したサステナブル素材の開発にもつなげ、ENLITENを強化している。

 これにより、企業コミットメント「Bridgestone E8 Commitment」で掲げる「Energy カーボンニュートラルなモビリティ社会の実現を支えること」「Ecology 持続可能なタイヤとソリューションの普及を通じ、より良い地球環境を将来世代に引き継ぐこと」にコミットしていく。

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