本連載では応援購入サービス(購入型クラウドファンディングサービス)「Makuake」で注目を集めるプロジェクトを取り上げて、新製品の企画から開発、販売に必要なエッセンスをお伝えする。第5回はインターナショナルシューズのレザースニーカー「brightway」を取り上げる。
市場環境が変わる中、B2B事業で培った技術を生かして新たにB2C製品を作るモノづくり企業が増えている。大きなチャンスだが、今までと異なる機軸で新製品を作る上では大変な苦労もあるだろう。本連載では応援購入サービス(購入型クラウドファンディングサービス)「Makuake」のプロジェクトをピックアップし、B2C製品の企画から開発、販売に至るまでのストーリーをお伝えしたい。
ファクトリーブランドの立ち上げに当たり、現時点で自社が持つ技術や人員のポテンシャルをベースに製品開発を進めるケースは往々にしてある。しかし時として、そうした考えには大きな落とし穴が潜んでいることもある。「できること」を起点に事業を考えるのは正攻法ではあるものの、それが世の中から「求められていること」と一致するとは必ずしも限らないからだ。
1954年に大阪市浪速区にて創業した、老舗の婦人靴メーカーのインターナショナルシューズもそうした経験をした。同社は「靴づくりを通じて足元から暮らしを豊かに」をモットーに、創業以来長きにわたって婦人靴ブランドのOEM製造を手掛けてきた。そして、その経験をもとに一度はファクトリーブランドを立ち上げるも奮わず、辛酸をなめた経験を持つ。その後、市場のニーズを見直し、既存の業界の常識を超えることで新たな道を切り開いた。
今回はファクトリーブランドの立ち上げから失敗の要因、また再起に至るまでの経緯を、インターナショナルシューズ 専務取締役の上田誠一郎氏に話を聞いた。
――貴社は婦人靴のOEMが好調だった中、ファクトリーブランドを立ち上げられました。その背景を教えてください。
上田誠一郎氏(以下、上田氏) 私が入社した2015年当時、売上のほぼ100%がOEMによるものでしたが、取引先が2社のみと大きく偏っていました。さらにその翌年、売り上げの60%近くを占めていた1社が、民事再生手続きの対象になってしまいました。
「このままでは家業がなくなってしまう」と思い、新たな取引先を開拓すべく営業に奔走しました。しかし生産コストが全く合わず、どこからも門前払いされてしまったんです。今思えば、アパレルブランドのほとんどは既に海外で製品を作っていたため、製造にかかわる工程を日本国内で一貫して担っている当社の商品ではコストが合わなかったんですね。それで自社ブランド設立への機運が高まり、レディースブランドを立ち上げようとしました。
しかし、結果的にこれはうまくいきませんでした。
――失敗の要因について、どうお考えでしょうか。
上田氏 自分たちに都合がいいものを作って売ろうとしていたことかな、と思います。これまでOEMでさまざまな婦人靴を作ってきた経験をベースに、靴の中敷きをちょっと変えて、リボンを付けて売る、「ザ・ファクトリーブランド」といったような、自分たちのできる範囲のことをやっていました。でもそれはお客さまが欲しいもの、望んでいるものではなかった。これが一番の要因だと思っています。
――そこから再起をかけたユニセックスレザースニーカー「brightway」を発表し、Makuakeで大反響を得ました。この製品を作ったきっかけは何だったのでしょうか。
上田氏 まず、私自身がセットアップを着る機会が多かったのですが、革靴だと硬すぎるし、ランニングシューズはちょっとラフすぎると感じていたんです。そのため革靴のように履けるシンプルなレザースニーカーが欲しかったのですが、どこを探しても見つからなかった。
それに加えて、当社の工場見学に来た男性のお客さまや、Makuakeでプロジェクトをサポートするキュレーターから「何でメンズラインをやらないんですか」といわれていました。そこで初めて「あ、自分たちがメンズラインを作ってもいいんだ」と思ったんです。じゃあ思い切って自分たちでメンズラインも含めたスニーカーを作ってみよう、と始めました。
――婦人靴メーカーがメンズラインを作るのは、あまり一般的ではないのでしょうか。
上田氏 靴業界というのは、メンズかレディースかでサプライチェーンが完全に別れているんです。必要なパーツに応じて、素材はもちろん生産設備なども異なるからです。さらに、パンプス、ブーツ、ローファー、サンダルなど作る靴によって工場がそれぞれ違うんですよ。
だから、レディースのパンプスからメンズのスニーカーに宗旨替えするというのは、当時の業界の常識からすると革新的なことでした。私自身も自分たちは婦人靴を作るものと思い込んでいたので、メンズラインを作るなんて発想はそれまで全くなかったですね。
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