ヤマハ発動機 生産技術本部 生産技術部 部長の小倉純一氏は「この鋳造工程で化石燃料を多く利用するのは溶解炉と熱処理炉で、鋳造工程全体におけるCO2排出量で約75%を占めている」と話す。
溶解炉は、アルミニウム合金のインゴットを溶かす溶解バーナーと溶けたアルミニウム合金の温度を維持する保持バーナーを搭載している。「保持バーナーは求められる熱量が少ないため電化を検討しているが、溶解バーナーは多くの熱量を必要とするため電化は不向きと判断している」(小倉氏)。
熱処理炉は、溶体化炉や時効炉、水槽を用いて、鋳物に溶体化、焼入れ、時効のプロセスを行う。それぞれの炉では炉内温度を計測しバーナーによる温度制御で温度を均一に保っている。「これらのバーナーで使用する化石燃料をCO2排出量が少ないエネルギーに転換することが求められている」(小倉氏)。
そこで、今回の実証施設には、水素ガスと合成メタンを燃料として使用できる溶解炉と熱処理炉を導入し、実証実験として最大効率となる温度制御や鋳造部品の品質作り込みを実施する。さらに、水素ガスを供給するためのグリーン水素製造装置とCO2から合成メタンを作るメタネーション装置も導入する計画だ。
具体的には、水素燃焼に関して、専焼(特定の燃料のみで燃やすこと)による評価を実施し、溶解炉の溶湯品質、熱処理炉の温度制御や外観影響、鋳造部品の強度評価などを行い、対策を講じる。使用する水素ガスについては外部からの供給と社内での製造で確保することを検討している。
合成メタン燃焼では、水素ガス燃焼による方式が難航する場合に備え、メタネーション技術も並行して技術開発を進める。合成メタンについては、都市ガスの燃焼により生じた排ガス中のCO2を回収し、このCO2を水素と触媒反応させメタンを合成する。現在、メタネーションに関しては、静岡大学 工学部 教授の福原長寿氏と共同研究を進めている。「外部加熱を必要とする従来方式のメタネーションとは異なり、外部加熱を必要としない水素と酸素の燃焼反応を利用したオートメタネーション装置を導入する」(小倉氏)。
今後は、2024年内に実証施設の開発に着手し、実証実験は2025年9月頃の開始を予定している。2026年末をめどに水素ガスを用いたアルミ合金の溶解および鋳造部品の熱処理に関する技術開発を完了し、生産移行の判断を行う。開発が完了したこれらの技術は、2030年を目標に国内で実装し、その後は海外拠点やサプライヤーへの展開を目指す。また、2035年のScope1とScope2におけるカーボンニュートラル実現に向けては、「化石燃料の最小化」「安価な水素ガスの安定調達」「CO2削減技術のめど付け/実装」といった課題があり、これらの解消を目指し技術開発を進めていく。
ヤマハ発動機 生産技術本部 生産技術部 CN工法開発グループ グループリーダーの坪井隆昌氏は「電力に関しては、森町工場では現在、CO2フリー電力を採用しているが、2025年に太陽光パネルの設置を検討している。そのため、実証実験では太陽光パネルで創出した電力とCO2フリー電力を併用する見込みだ」とコメントした。
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