製品開発に従事する設計者を対象に、インダストリアルデザインの活用メリットと実践的な活用方法を学ぶ連載。今回は、これまであまり注目されてこなかったB2B製品におけるデザインに着目し、その効果や重要性、そして競争優位性向上のためのデザイン戦略について解説する。
工業製品開発における「デザイン」というと、とりわけ家電や携帯電話などのコンシューマー製品のイメージが強い方も多いかもしれませんが、B2B製品(例えば、産業用ロボット、工作機械、自動車部品など)においてもデザインは非常に重要な要素であるとされています。
特に近年では、B2B製品においても、製品の機能や価格だけでの差別化が難しくなっています。そのため、競合との差別化を図るための戦略としてデザインを活用する企業が増えてきました。
そこで、本稿ではこれまであまり注目されてこなかったB2B製品におけるデザインに着目し、その効果や重要性、そして競争優位性向上のためのデザイン戦略について解説していきます。
この記事を通して、B2B製品開発に携わる方が、デザインの可能性を再認識し、今後の開発に役立てていただければ幸いです。
まずは、なぜ今B2B製品にデザインが必要なのか? そして、なぜこれまでデザインが軽視されてきたのか? について解説します。
かつては、産業用機器や工作機械などをはじめとするB2B製品は、「高機能」であることや「低価格」であることがそのまま競争優位性に直結していました。しかし、技術や市場が成熟した現代においては、機能や価格だけでの差別化が困難になっています。
市場によって個別課題はあるものの、差別化が難しい要因としては以下のことが共通して挙げられます。
■B2B製品の差別化が難しい要因
従って、このような状況下で顧客に選ばれる製品を提供するためには、機能や価格以外の価値を訴求していくことが重要になります。
競争優位性の高い製品を創出するには、そもそも、製品の付加価値がどのように決まるのかを理解する必要があります。以下で、製品の付加価値を構成する3つの要素について解説します。
■製品の付加価値を構成する3つの“E”
これら3つの要素は、それぞれが独立したものではなく、互いに影響し合い、複雑に絡み合っています。そして、3つのうち、機能やコストなどの要素を含む「技術(Engineering)」と「経済性(Economics)」での差別化が難しくなってきているのは、先述の通りです。
つまり、製品を差別化し競争優位性を高めるためには、残された一つである「顧客体験(Experience)」の向上が必要です。
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