常温/常圧で進行するアンモニアの連続電解合成で世界最高性能を達成研究開発の最前線

出光興産らは、共同で実施している研究開発で、空気中に多量に存在する窒素と水から常温/常圧で進行するアンモニアの連続電解合成で世界最高性能を達成した。

» 2024年07月08日 06時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 出光興産、東京大学、大阪大学、産業技術総合研究所(産総研)は2024年7月4日、共同で実施している研究開発において、空気中に多量に存在する窒素と水から常温/常圧で進行するアンモニアの連続電解合成で世界最高性能(同社調べ)を達成したと発表した。

 アンモニアの連続電解合成とは、プラスとマイナスの電極とこれらを分ける隔膜で構成される電解セルと呼ばれる装置に通電することで、触媒の存在下、窒素と水から連続的にアンモニアを合成することを指す。太陽光、風力などの再生可能なエネルギー由来の電気を用いることで、アンモニア製造工程のカーボンフリーが実現可能となる。

アンモニア生成速度が従来技術より約20倍向上

  燃焼時にCO2を排出しないアンモニアは、水素を液体や水素を含む化合物に転換し輸送/貯蔵する水素キャリアや発電/工業ボイラー用の新燃料として注目されている。

 しかし、現在のアンモニアの主な製造方法である「ハーバーボッシュ法」は、水素と窒素を高温/高圧下で反応させるためCO2排出が避けられない。また、原料の水素を石油、石炭、天然ガスなどの化石燃料から取り出すため、原料由来のCO2排出も課題となっている。

 今回の研究では、常温/常圧下の窒素、水、電気(再生可能エネルギー由来を想定)でアンモニアを連続的に製造できることをラボスケールで実証した。実証した技術は、ハーバーボッシュ法に替わり、アンモニア製造工程におけるカーボンフリーの実現に貢献する技術となっている。

 研究開発では、東京大学大学院工学系研究科 教授の西林仁昭氏らが開発したモリブデン触媒を応用している。加えて、モリブデン原子を取り囲むように配位子と呼ばれる分子などが結合したモリブデン触媒に適した電解合成技術の開発により、電解合成に使用する電極の単位面積当たりのアンモニア生成速度が従来技術より約20倍向上し、世界最高性能を達成した。

図1 常温/常圧下、窒素、水、電気を用いたアンモニア電解合成反応の性能値比較 図1 常温/常圧下、窒素、水、電気を用いたアンモニア電解合成反応の性能値比較[クリックで拡大] 出所:出光興産
図2 アンモニア電解合成反応試験の様子 図2 アンモニア電解合成反応試験の様子[クリックで拡大] 出所:出光興産

 今後は、コスト競争力の高い量産化技術の確立を目指し着実に開発を進め、研究成果を発展させていく。

 なお、今回の研究開発は、出光興産を幹事会社とし、新エネルギー・産業技術総合開発機構のグリーンイノベーション基金事業の委託業務として実施している。

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