モノづくりDXの重要性が叫ばれて久しいが、満足いく結果を出せた企業は多くない。本連載ではモノの流れに着目し、「現場力を高めるDX」実現に必要なプロセスを解説していく。第6回はIoTの中でも「いいIoTの作成を成功に導くポイント」を説明する。
前回は、「いいIoT(モノのインターネット)」とは、デジタルネイティブの思想で作られたIoTサービスである、と定義した。ちまたで「Software First」「Software Defined」と語られるが、まさしくこうした思想で設計されたサービスのことである。
最終回は、「いいIoTの作成を成功に導くポイント」をお話ししたい。当社がIoTサービスである「スマートマットクラウド」を作る過程で、試行錯誤の末、学んだことであり、以下の3つのポイントにまとめられる。
いいIoTの構成要素には、「賢いクラウド」と「シンプルなハードウェア」が欠かせない。なぜこれらが大事なのか?
賢いクラウドから説明していこう。ここでいう「賢い」というのは、ユーザーとサービス提供者の両方から見て、「スマート」な体験を提供するといった意味合いだ。適切に構築したクラウド環境上で動作するソフトウェアは、次のような価値をもたらしてくれる。
そして、シンプルなハードウェアにすることで、ハードウェアの稼働の安定性を高めるとともに、製造/運用/保守のコストを最小化できる。余計な部品がない分、電力消費やコストを圧倒的に低く抑えられる。機能がシンプルであるが故に、開発後のテストも簡単で、それゆえ必然的に製品品質も高まる。
こうした考え方で作られた製品の具体例として、在庫管理を実現する当社のIoT重量計「スマートマットクラウド」の設計方針を説明したい。
まずシンプルなハードウェアという面から見よう。IoT重量計が保有するデータは自身のシリアル番号だけで、計測可能なデータは重量のみだ。1ボタン/1ランプしかなく、機能も単純に計測、通信することに絞っている。
IoTハードウェア自体には、計量対象のモノが何かを判別する機能も搭載していない。言い換えれば、「自分の上に何が置いてあるかすら知らない」中、淡々と計測/通信する動作だけを行っているわけだ。
ユーザーからは表示モニターや設定ボタンがハードウェア上に欲しいという要望も受ける。だが、こうした機能は、クラウド上のソフトウェアで同等のものが実現できるので、潔く捨てた。電池を入れればすぐにON状態になるので、電源ボタンすらない。結果、一度電池を入れれば5年間の連続稼働できる省電力な製品になった。
ハードウェア面で大きなバグが発生したことはない。通信データの情報量も複雑で高度なものが含まれておらず、どれも単純なので、データ漏えいによるセキュリティリスクも抑えられている。
その他ほぼ全てのデータ/機能はクラウドソフトウェアで実現できるようにしてある。商品などのマスターデータ類や、重さを個数や百分率で表現する機能、時系列データの蓄積/分析など、ほぼ全機能をクラウドソフトウェア上で実現する。結果、さまざまな外部システムと簡単に連携できるし、毎月機能のアップデートを続けている。
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