そういえば今回、SBCなどではなく組み込み向けのマザーボードとして唯一展示されているのを見かけたのはMSIのMS-CF06(図12)のみ。もうPCをそのまま組み込みに使うという時代ではなくなってきており、x86を使いたければSBCないしSOMを使え、ということかもしれない。
それとは関係ないが、そのMSIは、先日発売されたばかりのEPYC 4004向けマザーボードとしてD3051(図13)とD3052(図14)の2枚を展示していた。AMDの場合、EPYC EmbeddedはともかくEPYCシリーズは組み込みの現場に持ち込むにはちょっと“オーバーキル”なところがあった。EPYC 4004シリーズは従来のPCと同じ寸法でプラットフォームが用意できる分、これまでよりも容易に組み込み向けに利用できそうである。
今回のCOMPUTEXはもうとにかくAI(人工知能)がメインテーマであって、NVIDIAやSuperMicro、MediaTekといったメーカーは生成AIに向けたクラウド側のソリューションを、Intel、AMD、Qualcommはクライアント側のCopilot+ PCに向けたソリューションをそれぞれ大々的にアピール。またINNOVEXでも、少なからぬメーカーがAIソリューション(主にソフトウェア)を発表していたりしたのだが、置いてけぼりだったのが組み込み向けのAIだ。
NVIDIAのJetson Nanoをベースにしたボードソリューションを展示していたブースもあったが、単にJetson NanoベースのSBCなどが並んでいるだけで、あまり見るべきものはなかった。唯一組み込み向けということで複数メーカーから展示されたのがHailoのHailo-8のソリューションである(図15)。
もっともこれ、前回も展示されていたことを考えると決して新しいものではないのだが、逆に言えばエッジAIよりもさらに端っこというかエンドポイントAIに近いところはまだこの程度、という言い方もできる。2024年からは、AI処理向けのNPUを搭載したMCUが本格的に市場に出てくる(NXPのMCXシリーズ、InfineonのPSOC Edge、ALIF SemiconductorのEnsemble E1C、etc……)ことを考えると、次回の2025年のCOMPUTEXあたりではもう少し充実してくれてもよさそうな気はするのだが。
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