中国メーカーの復活と関連する話だが、目立ったのはx86の衰退である。もちろん、まだSBCやSOMにIntelのCeleronやPentium、一部CoreやCore Ultraを搭載した製品なども展示されていたが、かつての様にIntel「だけ」というメーカーはほぼ姿を消してしまい、どこのメーカーもx86に加えてArmのソリューションをごく当たり前のようにリリースしていた。
一番顕著だったのは台湾DM&Pだろうか。同社はx86互換で独自のVortex-86コア(元はSiS550シリーズであり、大本はRiSE mP6である)を保有し、当初のVortex-86(これはほぼSiS550シリーズそのまま)をベースに、Vortex-86DX/DX2/DX3やVortex-86SX、Vortex-86MX、Vortex-86EX/EX2などの派生型コアと、これらを搭載したSBCを発売していた。ちなみにこれらのシリーズの簡単な比較表がこちらのWebサイトにある。
そんな同社であるが、今回のブース(図9)を見ると、一応まだVortex-86シリーズの製品も残しつつ、i.MX8M Mini搭載の製品やIntelのAtom/Celeron/Pentium搭載製品などもラインアップされており、そろそろローエンド向けのx86はビジネスにならなくなりつつある状況を垣間見ることができた。
ちなみにブースで「Vortex-86DX4は?」と聞いたところ「いろいろ検討しているが、まだ具体的なプランはない」という返事。そもそも一番性能の高いVortex-86DX3ですら、Single-Issue/In-Orderの1GHz動作のデュアルコアであり、単に命令セットがPentium互換になっているだけで、先に挙げたRockChipのRK3588と性能を比較するのもむちゃというレベルでしかない。しかもマーケットはそろそろ組み込み向けも64ビットにシフトしつつある。ここで32ビットCPUであるVortex-86の後継製品を開発したところで、どこまで市場があるか? というと怪しいところである。それは具体的なプランがないのも当然であろう。
現在、COMPUTEX TAIPEIは台北市南港区にあるTaiNEX 1(図10)と、そのTaiNEX 1と道路を挟んで向かいに位置するTaiNEX 2(図11)の2つの会場を使って開催されている。このTaiNEX 2の方は1階と4階に展示ブースがあるのだが、特に4階の方は半分がINNOVEX(スタートアップやベンチャー、産学共同、海外企業に特化したイベント)に割り振られている。
では残りの半分は? というとPOSエリアと化しており、POS本体からバーコードスキャナー、プリンタ、ドロワー、メーカーによってはバックエンドを含むシステム一式などの展示が行われており、今回も無人POSや(Amazonが撤退とまでも言わないけど縮小を行っていると報じられている)無人店舗システムなどのデモも行われていた。
それはともかくとして、2018年のComputex TaipeiレポートでもこのPOS向けの端末がWindows+Intelベースから、Android+Armベースにシフトしつつある状況をレポートしたが、これがさらに顕著になっていた。Windowsベースのものは引き続きx86ベースのシステムで提供されているが、それ以外にAndroidあるいはLinuxベースのものも躍進が著しい。まだ、「どうしてもWindowsベースのPOSが欲しい」(理由は分からないが、バックエンド側との統合の関係だろうか?)というニーズはあるそうなので、当面WindowsベースのPOSをラインアップから外す予定はないとしているが、もうx86でないといけないマーケットというのは旧来のアプリケーションとの互換性が必要なマーケットに限られ始めてきた、というのが筆者の印象である。
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