次の条件を提示して見積依頼をする。
ロットは1回の生産における生産数である。毎月1回100個の生産ならロットは100個、3カ月に1回300個の生産ならロットは300個である。生産年数は工作機械の減価償却費に関わるため、マシンチャージに影響してくる。金型の取り数は、1回の成形でできる部品の個数なので、加工時間に影響してくる。
特に、海外に見積依頼をする場合は、次の2つに関してコストの提示方法を指定した方がよい。
例えば、中国の部品メーカーに見積依頼した場合、部品コストを円で提示してきたり、ドルで提示してきたりする場合がある。これでは、為替レートが変動すると部品コストも変動してしまう。また、海外の部品メーカーの用いた為替レートが分からなければ、円に換算できない。このことから、部品メーカーの国の通貨単位で価格を提示してもらうのがよい。
部品メーカーによって、税金が入っていたり、入っていなかったりする。税込みと税別のどちらの方が都合がよいかは見積依頼する側によるので、税込み/税別の要望を出しておく。
これら2つに関しては、明確に指示しておかないと何度もメールで質問することになってしまうので注意しよう。
前述した項目は、あらかじめ一覧表に記載して見積依頼をするとよい。特に、複数部品の見積もりを電話やメールの文章で依頼すると、お互いに誤認識が生じる場合があるので避けたい。一覧表では、図3の黄色のセルを記入してもらい、このセル1つに対して1つの見積明細書をもらうのだ。
見積もりは、複数社に相見積もりを取る場合がある。しかし、部品メーカーにとって受注につながらない見積書の作成は時間の無駄であるため、極力したくないのが本音だ。特に、海外の部品メーカーに「○○の国では、取りあえずいくらくらいになるのだろう?」の感覚で見積依頼をすると、異常な高値を提示されて断られる場合がある。特に、小ロットの多い昨今では、部品メーカーもあまりもうけにならない仕事は受けたくない。そこで、“本気”の見積もりを取得するためには次の2つが重要となる。
生産開始時期は「取りあえずではなく、本当に生産する」、希望価格は「取りあえずではなく、この価格以下なら発注する」という意思表示なのだ。本気の見積もりを取りたかったら、依頼する側も本気度を示さなければならない。取りあえず感覚の見積もりは厳禁だ。 (連載完)
オリジナル製品化/中国モノづくり支援
ロジカル・エンジニアリング 代表
小田淳(おだ あつし)
上智大学 機械工学科卒業。ソニーに29年間在籍し、モニターやプロジェクターの製品化設計を行う。最後は中国に駐在し、現地で部品と製品の製造を行う。「材料費が高くて売っても損する」「ユーザーに届いた製品が壊れていた」などのように、試作品はできたが販売できる製品ができないベンチャー企業が多くある。また、製品化はできたが、社内に設計・品質システムがなく、効率よく製品化できない企業もある。一方で、モノづくりの一流企業であっても、中国などの海外ではトラブルや不良品を多く発生させている現状がある。その原因は、中国人の国民性による仕事の仕方を理解せず、「あうんの呼吸」に頼った日本独特の仕事の仕方をそのまま中国に持ち込んでしまっているからである。日本の貿易輸出の85%を担う日本の製造業が世界のトップランナーであり続けるためには、これらのような現状を改善し世界で一目置かれる優れたエンジニアが必要であると考え、研修やコンサルティング、講演、執筆活動を行う。
◆ロジカル・エンジニアリング Webサイト ⇒ https://roji.global/
◆著書
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.