Ubuntuを展開するカノニカルも、アイ・オー・データとのライセンス契約により日本市場での事業拡大を進めたい考えだ。もともとカノニカルは、Ubuntuの商用ライセンス販売を直販で行ってきた。しかし近年はパートナー経由の販売に力を入れており、直近6年間で直販60%からパートナー経由75%に移行している。
またカノニカルは、2010年代に日本市場に参入し、2016年には日本法人を立ち上げているが、Ubuntuと比べて、カノニカルの知名度は高いとはいえない状況にある。日本法人の人員が限られている中で、日本国内で高い知名度を持つアイ・オー・データとのライセンス契約とUbuntu Pro for Devicesの拡販は重要になってくる。なお、日本市場では、Ubuntuに対する期待は高く、直近のLTS版であるUbuntu 24.04 LTSを発表した時の調査では、日本市場におけるUbuntuへの興味は前年比で25%増、Ubuntu Pro for Devicesの採用が期待されるIoT(モノのインターネット)ソフトウェアマーケットは同28%増だったという。
アイ・オー・データは、Ubuntu事業の初年度売上高で8億円という比較的高い目標を掲げているが、これは一定の需要がベースにあるためだ。同社は、日本医師会が標準を定めた医療費計算を行う基幹システムのORCA(Online Receipt Computer Advantage)に対応するNASベースのオンライン資格確認端末を2019年にリリースしており、既に多くの納入実績がある。
ORCAは電子カルテとも連携しており、今後はこの電子カルテのバックアップをクラウドだけでなく、緊急時用にオンプレミスでも行うニーズが高まるとみられている。今回の発表において、アイ・オー・データが販売を予定している高信頼モデルは、ORCAに対応するとともに電子カルテの緊急時用オンプレミスバックアップに向けて開発された。ORCAのユーザーは国内に1万8000以上あり、それらの中で先行的な取り組みを行う医療機関などでの採用を見込んでいる。医療機関向けのシステムということで、最長12年間のセキュリティアップデートやユーザーの手間を“0”にするという方向性がニーズに合致するというわけだ。
なお、アイ・オー・データが提供するUbuntu搭載デバイスのサポートサービスについては、既にカノニカルとパートナー契約を締結しているSRAが担当する。
会見では、アイ・オー・データのUbuntu搭載デバイス2機種の他、オプティムのAIカメラサービス、サイバーステーションのデジタルサイネージ向けセットトップボックス、PyreneeのAIドライブアシスタント「Pyrenee Drive」といった、Ubuntuを採用している製品やサービスが展示された。
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