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» 2022年06月08日 06時30分 公開

サイバートラストの10年サポート組み込みLinux「EMLinux」がx86プロセッサに対応組み込み開発ニュース

サイバートラストは、組み込み機器やIoT機器向けのLinux「EMLinux」について、x86アーキテクチャ(以下、x86)のプロセッサに対応すると発表した。EMLinuxは、10年間の長期サポートが最大の特徴で、これまではArmアーキテクチャのプロセッサのみをサポートしていたが、顧客の強い要望に合わせてx86への対応を決めた。

[朴尚洙,MONOist]

 サイバートラストは2022年6月7日、組み込み機器やIoT(モノのインターネット)機器向けのLinux「EMLinux」について、x86アーキテクチャ(以下、x86)のプロセッサに対応すると発表した。EMLinuxは、10年間の長期サポートが最大の特徴で、これまではArmアーキテクチャのプロセッサのみをサポートしていたが、顧客の強い要望に合わせてx86への対応を決めた。

 EMLinuxは、同社が参画するCIP(Civil Infrastructure Platform)やOpenSSFなどOSS(オープンソースソフトウェア)コミュニティーにおける活動の知見が反映されており、長期間にわたる利用が前提となる組み込み機器や産業用IoT機器向けに10年間の脆弱性パッチの提供を保証している。この長期サポートに加えて、脆弱性検査機能を継続的に強化しており、顧客のハードウェア製品に搭載されているカーネルやOSSパッケージにおける脆弱性修正の適用状態を検査可能にし、長期的な安定利用も支援している。さらに、組み込み機器やIoT機器に必要なネットワークやGUI用のソフトウェアパッケージが標準でそろっているので、顧客は独自開発部分に注力した開発をすぐに始められるとしている。

CIPの活用 EMLinuxには、CIPにより10年以上のメンテナンスが行われる超長期メンテナンス版カーネルの技術が反映されている[クリックで拡大] 出所:サイバートラスト

 この他、CIPなどのLinuxカーネルの品質やセキュリティを確保するテストの自動化やCI/CD(継続的インティグレーション/継続的デリバリー)の取り組みであるKernelCIプロジェクトにもサイバートラストの社員がメンテナーとして参加しており、その最新の成果がEMLinuxに反映されている。

KernelCIとCIP、EMLinuxのリリースサイクルの関係性 KernelCIとCIP、EMLinuxのリリースサイクルの関係性[クリックで拡大] 出所:サイバートラスト

 EMLinuxは、組み込みLinuxで標準的なYoctoプロジェクトがベースになっており、x86プロセッサで動作しないわけではない。しかし、2019年のEMLinuxのリリース当初は、主にx86プロセッサを搭載するPCやワークステーション向けのLinux製品である「MIRACLE LINUX」との違いを際立たせる狙いもあり、IoT機器で広く利用されていた「Cortex-Aシリーズ」などのArmプロセッサのみを正式サポートする戦略をとった。

 しかしここ1年ほどで、EMLinuxを使ってエッジコンピューティングやエッジAI(人工知能)、マイクロサーバなどを開発したいという顧客からの要望が出ていた。これらのニーズに対するArmプロセッサ搭載ボードの課題になっていたのが、PCI-Expressインタフェースの多くがGen2にとどまっていることである。「AIアクセラレータなどの活用を考えるとPCI-ExpressインタフェースはGen3以上が求められる。Armプロセッサ搭載ボードはGen3を利用できる製品が少ない上に、その数少ないGen3搭載ボードは近年の半導体不足もあって入手が困難になっている。これに対して、x86プロセッサ搭載ボードの多くはPCI-ExpressインタフェースのGen3〜Gen4の利用が可能であるとともに、比較的入手もしやすい」(サイバートラスト新規ビジネス開発統括 IoT技術本部 IoT Linuxサービス開発部 部長の豊岡拓氏)という。

 また、サイバートラスト社内でも、同社が提携するクアドリック(Quadric.io)のエッジ向けスーパーコンピューティングソリューションの実力を引き出すために、EMLinuxのx86プロセッサ対応が求められていた。豊岡氏は「このようにEMLinuxのx86プロセッサ対応への強いニーズが社内外からあり、今回の発表となった」と説明する。

 なお、MIRACLE LINUXは、現行の「MIRACLE LINUX 8.4」がRHEL(Red Hat Enterprise Linux)クローンであり、組み込み機器やIoT機器の開発で求められるカスタマイズのニーズへの対応が難しい。EMLinuxは、開発者が必要な機能を取捨選択してビルドできるYoctoプロジェクトベースであり、今回のx86プロセッサ対応でも差異化は図れているとする。実際に、MIRACLE LINUXの場合はデータ容量が数GBクラスになるが、EMLinuxは最適化すれば数十MBクラスまで抑えられる。

 今回のEMLinuxのx86プロセッサ対応の発表は、インテルのElkhart Lake世代のAtomプロセッサ「x6000Eシリーズ」での動作検証を完了したことによるものだ。これに基づき、サイバートラストは、EMLinuxのインテル製x86プロセッサ全般への対応も表明した。

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