ウインドリバーがIoT時代を迎えて需要が拡大する組み込みLinuxとその最新技術について説明。本稿では、同社の小宮山岳夫氏の説明内容に基づき、組み込み機器の定義や、リアルタイムOSと組み込みLinuxの使い分け、IT機器向けと組み込み機器向けのLinuxの違い、組み込みLinuxで存在感を増す「Yocto」、クラウドネイティブと関係性などについて解説する。
ウインドリバーは2019年9月30日、東京都内で会見を開き、IoT(モノのインターネット)時代を迎えて需要が拡大している組み込みLinuxとその最新技術について説明した。本稿では、同社 営業技術本部 第一営業技術部 シニアエンジニアの小宮山岳夫氏による会見の内容に基づき、組み込み機器の定義や、リアルタイムOSと組み込みLinuxの使い分け、IT機器向けと組み込み機器向けのLinuxの違い、組み込みLinuxで存在感を増す「Yocto」などについて解説する。
組み込み機器、組み込みシステムとは、特定の機能を実現するために機械や装置などに組み込みまれるコンピュータシステムのことだ。工場の機械を制御する産業用制御機器、携帯電話基地局などで用いられる通信機器、病院で患者の診断を行う医療機器などで「ハードウェアとソフトウェアが同時に提供されるもの」(小宮山氏)だ。
組み込み機器にはさまざまな特徴がある。単一もしくは数種類の決まった目的のために作られており、製品ライフサイクルが長い。例えば、代表的なIT機器であるPC、スマートフォン、サーバなどは2〜3年が製品寿命となるが、組み込み機器は長い場合には20〜30年に達する。
また、安定的な動作が求められる一方で、プロセッサの処理能力やメモリ容量、供給電力などコンピュータリソースが限られていることも多い。これらの特徴に対応するため、組み込み機器ではOSとしてリアルタイムOSを採用するか、ベアメタル(OS無し)にすることが多かった。
さらに、従来の組み込み機器は、運用を開始してからは機能追加を行わないことが多い。「ただし、IoT時代に入って組み込み機器がネットワークにつながるようになってから、機能追加も求められるようになっている」(小宮山氏)という。
先述した通り、組み込み機器はリアルタイムOSかベアメタルが基本だったが、近年ではLinuxが搭載されることも増えてきた。その最大の理由は「組み込み機器に搭載されるプロセッサの処理能力が向上し、Linuxを動作させられるようになってきた」(小宮山氏)ことだ。その代表例となるのが、IoTデバイスのPoC(概念実証)などでも活用されている「Raspberry Pi」だろう。
この他にも、IT機器向けのLinuxで開発された多くのソフトウェアが利用できること、オープンソースで開発されることもあって新しいソフトウェア技術がLinuxで導入されやすいこと、IT機器の開発者にとってLinuxがなじみあるものになったこと、などの理由がある。
さまざまな理由があって組み込み機器へのLinux採用は広がっているが、全てがLinuxにはなることはなく、今後もリアルタイムOSと併用されていくことになる。例えば、高い応答性(低遅延)や、人命にかかわるようなミッションクリティカル性、自動車や産業用機器、医療機器などで求められる各種認証への準拠についてはリアルタイムOSに優位性がある。一方で、組み込み機器であっても、より多くの機能を使いたい場合や、オープンソースソフトウェアを活用したい場合にはLinuxが優れている。
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