図4に示すように、高温の物体(表面温度一定のTw)の周りに低温の流体(温度T∞)が流れている場合を考える。
このとき、物体表面からの熱流束は、
となる。熱伝達率hは場所によって異なり、物体全表面からの熱量は、
となる。物体表面の平均熱流束を
と定義すると、
となり、hmを「平均熱伝達率」、最初の式のhを「局所熱伝達率」という。熱伝達率は、熱伝導率、温度伝導率と異なり、流体の物性だけで決定することはできず、以降で述べるように、物体の形状や流れの状態によって決まる。
平板に沿った流れを考えると、図5に示すように先端位置に近い部分は層流、下流では乱流となる。
層流境界層内の流れは粘性に支配されていて、流速分布に対応したせん断応力τが流れ方向に作用する。その大きさは、
となる。平板表面のせん断応力τwは式16となる。
平板表面では、流体の分子は平板の表面に固定されている(静止している)ので、平板表面からの熱流束は熱伝導の基本式から、
となる。式17と前述の熱伝達の基本式から、
となる。すなわち、熱伝達率は温度境界層の温度勾配によって決まる。層流は乱流に比べて平板表面の温度勾配が小さいため、図5上図に示すような熱伝達率となる。
熱伝達率の評価には、境界層内の熱と流れが関係する。そこで、図6の座標系で、熱と流れの支配方程式を境界層近似すると下記となる。
上式の各変数を
により無次元化すると以下となる。
Reを「レイノルズ数」といい、
をプラントル数と呼ぶ。
一方、物体表面の熱伝達率は、
となる。これから、熱伝達に関する無次元数である「ヌッセルト数」を以下のように定義する。
ヌッセルト数は温度で決まるので、前述の運動方程式の無次元数であるレイノルズ数、プラントル数で表現できる。すなわち、
となる。
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