車載イーサネットの評価ツールも幾つか見られた。ファストリンクテックは、丸文のブースで、車載イーサネットの通信品質測定器「BR-100A-IP」を展示した。同社は光通信のビットエラーレート測定器などを得意としている。
「BR-100A-IP」は、電波暗室にDUT(試験対象機器)とBR-100A-IPの「PHY-BOX」を置いて、外部からノイズを与えながら、ループバック通信におけるSQI(Signal Quality Indicator)とBER(Bit Error Rate)を測定する装置である。
説明員によると、車載イーサネットの採用を検討している自動車メーカーおよびティア1サプライヤーからの要請に基づいて開発したそうで、既に納入済みだという。1000BASE-T1をサポートする「BR-1000A-IP」も販売中である。
ガイロジックは、ドイツのTechnica Engineeringが提供している車載イーサネットのテスト用ハードウェアを出展した。2008年創業のTechnica Engineeringは、車載イーサネットの黎明期から、開発評価用のさまざまな機器を提供してきたベンダーの一つである。
100BASE-T1と100BASE-TX、あるいは1000BASE-T1と1000BASE-Tとを相方向で変換するメディアコンバーターの他、6系統の10BASE-T1Sのトラフィックをキャプチャーし、タイムスタンプ情報等を付加したのち、上位の1000BASE-Tに出力するキャプチャーモジュール、MACsecのキーサーバを内蔵した100/1000BASE-T1のイーサネットスイッチなどを提供している。
ECUの適合ツールベンダーとして知られる米国のAccurate Technologiesもメディアコンバーターを出展した。100BASE-T1と100BASE-TXを変換する「AE-100」、100/1000BASE-T1を100/1000BASEに変換する「AE-1000」および100/1000BASE-T1とUSB 3.0を変換する「AE-1000 USB」の3モデルをそろえる。
これらのメディアコンバーターを使うことで、例えば100BASE-T1などの車載イーサネットデバイスを、一般的なイーサネットスイッチやプロトコルアナライザーなどに接続できるようになり、開発効率を高められると訴求する。
「VCG-1」は、CAN、CAN FD、LIN、100BASE-T1の間でマルチルーティングが可能なゲートウェイデバイスだ。車載ネットワークを刷新しようとしたときに、従来のバスに接続されていたセンサーやアクチュエータをそのまま接続できる。
東陽テクニカは、スウェーデンのZuragonのデータロガー「ViCANdo」を展示した。イーサネットの他、CAN、CAN FD、FlexRay、レーダーやLiDARなどの各種センシングデータの同期を取りながら記録できる。走行シーンの再現などが可能であり、ADASあるいは自動運転機能の評価や追試の効率化を実現する。1000種類ほどのセンサーとの接続実績があるという。
車載イーサネットは現時点では直接はサポートしていないため、外部のメディアコンバーターで通常の1000BASE-Tに変換してから入力する。
以上、「人とくるまのテクノロジー展 2024 YOKOHAMA」から、車載ネットワーク関連のソリューションの一端を紹介した。
クルマの中でやりとりされるデータ量の増加や、SDV(ソフトウェア定義型車両)の実現に向けたアーキテクチャの見直しを背景に、車載ネットワークが大きく変わろうとしている。ソリューションを提供する各ベンダーの取り組みにこれからも注目していきたい。
なお、人とくるまのテクノロジー展2024は、2024年7月17〜19日に名古屋会場(Aichi Sky Expo)でも開催される。本稿で取り上げた出展社のほとんどが名古屋会場にも出展を予定しているので、機会があれば足を運んでいただきたい。
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