デジタルツインを実現するCAEの真価

ビジョンなき教育に効果なし……CAE活用のグランドデザインの必要性設計者CAE教育のリデザイン(再設計)(4)(2/3 ページ)

» 2024年06月06日 09時00分 公開

CAE教育グランドデザインの一例

 グランドデザインのフレームワークに、筆者なりの項目を入れてみました。一つの例としてご覧ください(図2)。

CAE教育システムのグランドデザイン例 図2 CAE教育システムのグランドデザイン例[クリックで拡大]

 内容は企業によってもちろん変わります。これまで数社のCAE教育グランドデザインの作成をお手伝いさせていただきましたが、内容は各社で異なります。とはいっても共通項もあります。ここでは共通項について説明します。

共通項(1)CAEの学習方法

 いつでもどこでもCAEが学べる環境を作ることは、どの企業でも目標の一つに位置付けられています。コロナ禍によってオンラインでの会議や講習会が定着しました。その勢いでオンデマンドで聴講できる仕組みが整えられつつあります。

 ただ単に講習会の動画をイントラネットで配信できる仕組みを作っても、聴講者の数は増えません。LMS(Learning Management System)という学習管理システムの導入が必要です。動画の配信、確認試験、成績の管理などを総合的に行う学習管理システムがベースとなります。

共通項(2)CAEの学習内容

 新しい解析技術の開発も共通項の一つとして位置付けられています。前回紹介した「逆算のCAE」を実施する場合、CAEの学習内容はこれまでとはガラリと変わります。これまではソフトウェアの使い方をアイコン/コマンドベースで教えました。そのために講習会を開催し、手順書を作成しました。

 「カプセルCAE」では、そのカプセルに与える入力の意味と作法、出力の意味と解釈のみを教えることになります。教える方も習う方も、手間と時間が大幅に節約できます。もちろん、材料力学などの普遍的な座学は、設計者の常識として学習する必要があります。

共通項(3)CAEのQCD貢献

 CAEのQCD(品質、コスト、納期)への貢献度に関するメジャメントを定義することも、共通項目の一つとして位置付けられています。CAEがどれほど設計/製造に役立ったのかを、定量的に明確にしたいということです。CAEの学習方法をこれまでのように講習会+手順書+サポートで行う場合には、CAEのQCD貢献度調査が必要になります。CAEの利用を設計者に委ねてしまうからです。

 逆算のCAE的にいうと、これは順序が逆で、CAEグループは、QCDに明確に役立つ技術や手法を提供しなければなりません。解析の内容が難しかろうが、複雑であろうが、そんなことは設計に関係のないことです。CAEソフトウェアの機能で、できることを縛ることは本末転倒です。

 CAEの学習方法をこれまでの伝統的な方法で行うか、自動化、サロゲート化などの技術をベースにするか……。今が分水嶺(れい)です。

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