欧州や中国に比べると北米のEV(電気自動車)、PHEV(プラグインハイブリッド)化率は低いが、米国のIRA(インフレ抑制法)やEV市場の今後の成長を見据えてリチウムイオン電池メーカーらが相次ぎ投資計画を表明している。旭化成も北米のEV向けセパレータ需要の増加およびリチウムイオン電池サプライチェーンの現地化に対応すべく、製造拠点の新設を決定した。
「北米市場は大きな伸びしろがある。短期的には多少の足踏みはあれど、自動車に占めるEVの割合が過半数に達すると予測される2030年に向けて市場拡大は続くと見ている。IRA法はEV1台当たり最大7500ドルの補助金という強力な市場拡大策だが、その補助金対象となるためには、電池やその関連部品の生産が北米で行われなければならない。北米は中国や欧州と異なり、日系自動車メーカーが強いという特徴も挙げられ、現在の実力を考えると、北米市場は日系や韓国勢が電池およびその関連部材の主要プレイヤーとなるだろうと見ている」(工藤氏)
旭化成では「中期経営計画2024 〜Be a Trailblazer〜」において、セパレータ事業をグループの次の成長をけん引する10の「Growth Gears」の1つとして位置付け、中長期的な利益成長を目指している。新工場の稼働開始から5年後の2031年度にハイポア事業で売上高1600億円、営業利益20%以上を目指す。
「2030年代前半には投資分を回収できるという前提だ。今後のリチウムイオン電池の進化や全個体電池の登場などもリスクとして管理した上で、20%というのは最低限押さえておきたい部分であり、不測の事態も備えた価格を見越して採算性を見ている」(工藤氏)
2026年度より米国、日本、韓国の塗工膜の新ラインが稼働するため、さらなる販売量の増加も見込んでいる。同社によれば北米市場の主要顧客の40%において長期供給に向けて協議中、残りの60%でも順調に評価が進捗中という。北米市場の旺盛な需要を見据えて、第2期、第3期の投資も検討しており、これらを通じて北米での市場シェア30%以上の獲得を目指す。「完成車メーカーや電池メーカーから極めて旺盛な引き合いを受けており、これらの需要に確実に応えていくことが使命と考えている」(工藤氏)。
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