船舶技術の最前線! 自律運航に風力アシスト、最新の極地探査船も船も「CASE」(2/3 ページ)

» 2024年04月23日 06時00分 公開
[長浜和也MONOist]

“サンダーバード”チックなKDDIドローン

 KDDIブースでは船舶での導入が進む衛星通信ソリューションを展示していた。中でも注目を集めていたのが、Starlink Business マリタイムプランだ。既に、日本の船会社でも郵船クルーズの「飛鳥II」、商船三井さんふらわの内航RORO船「むさし丸」、遠洋漁船を擁する「長久丸」所属漁船などで導入が進んでいる。特に長久丸所属漁船では、スペースの確保が難しいカツオ漁船でも超遠距離かつ高速通信が安定して使える環境を導入できる点が高く評価されている。

洋上ブロードバンドのプラットフォームとして注目のStarlinkはKDDI以外にもスカパーJSATなど複数の衛星通信ベンダーで訴求していた[クリックで拡大]

 2024年1月に発生した能登半島沖地震では災害対応においてStarlinkを車載バッテリーで運用したが、このときは1000Whクラスのバッテリーで約7時間の運用が可能だったという。

 なお、KDDIでは携帯電話(4G LTE)端末とStarlinkでダイレクトに通信できるサービスを2024年度に開始する予定で、2024年1月にはこの機能に対応したStarlinkの最新鋭衛星6基がスペースXによって初めて打ち上げられて軌道上に展開している。こちらについてはSEA JAPANで特に訴求はされておらず、「現時点では2024年度中のサービス開始までしか言えることはない」とのことだ。

 KDDIの展示でもう1つの主役となっていたのが参考展示の「水空合体ドローン」だ。字面だけだと「1つのドローンで空も水中も!」といった特撮に出てきそうなネーミングだが、実際は大型マルチコプタードローンに双胴フロートを装着して水面への着水と離水をできるようにし、水上に着水した状態で機体に懸架した水中ドローンを切り離して潜航調査をできるようにしている。

水空合体ドローンは「水中ドローンを懸架した水上マルチコプター」で、その運用形態を特撮風に説明すると「カーゴにサンダーバード4号を収容したサンダーバード2号」といえるだろうか[クリックで拡大]

 オペレーターは陸上のオペレーションルームから遠隔操作が可能で、潜航海域までは飛行して短時間で移動し、潜航調査後はまた飛行することで短時間で広範囲の調査が可能になるという。

 参考展示の機材ではマルチコプタードローンと水中ドローンは70mのケーブルでつながっている。また、水中ドローンは潜航状態で1時間の行動が可能で、マルチコプタードローンは水中ドローンを搭載した状態で時速40km、20分の連続飛行が可能だという。なお、着水した状態での水上航行も可能としている。

「インターネットで見るAISはだいだいこれ」東洋信号通信社

 GPSと並んで航行支援機能としていまや必須となっているのがAIS(自動船舶識別装置:Automatic Identification System)だ。本船においてはAISデータをVHFに載せて送受信することで周囲にいる他船の動向を把握するが、それとは別に、陸上でAISデータを受信してその内容をインターネットで提供するサービスも利用が増えている。東洋信号通信社も同様のサービスを提供している企業だ。

陸から船舶の動静を把握するサービスで利用が増えている「AISインターネット配信」だが、その主要なAIS提供企業として東洋信号通信社は海事関連業界に欠かせない存在となっている[クリックで拡大]

 インターネットを介してAISデータを提供するサービスでは、データを提供するタイムラグが数分、ときには数十分と大きい場合もあるが、東洋信号通信社ではそのタイムラグが短いのが特徴とされている。同社ではAIS受信局網を構築するために日本国内におよそ100局の受信局を設置して独自運用している。

 これにより、東洋信号通信社における提供間隔は10〜15秒程度という。更新間隔が短いことから、AISの搭載が義務化されていない小型船舶などでも日本沿岸において公衆移動体通信網の圏内で衝突防止のためにソリューションサービスを提供することが可能となっている。

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