SUBARUは、2020年12月に東京の渋谷に開設したAI開発拠点「SUBARU Lab」におけるADAS「EyeSight(アイサイト)」の進化に向けた取り組みとAMDとの協業について説明した。
SUBARU(スバル)は2024年4月19日、オンラインで会見を開き、2020年12月に東京の渋谷に開設したAI(人工知能)開発拠点「SUBARU Lab」におけるADAS(先進運転支援システム)「EyeSight(アイサイト)」の進化に向けた取り組みとAMDとの協業について説明した。AMDが同月9日にアダプティブSoCの新製品「Versal AI Edge Series Gen 2」を発表した際に、SUBARUの次世代EyeSightへの採用が決まったことを明らかにしていたが、SUBARUはVersal AI Edge Series Gen 2をベースに、2020年代後半に投入予定の次世代EyeSight向けに一部カスタマイズを施して性能とコストのバランスを取った上で量産採用する方針である。
会見には、EyeSight開発をけん引してきたSUBARU 執行役員 CDCO(最高デジタルカー責任者) 兼 技術本部の柴田英司氏と、AMD Corporate Vice President of AI Product Managementのラミン・ローン(Ramine Roane)氏が登壇した。柴田氏は「EyeSight×AIの開発を加速するため渋谷に開設したSUBARU Labの取り組みにより、30年以上開発を積み重ねてきたEyeSightの最大の特徴であるステレオカメラの強みとAIの融合によって新たな進化を生み出せると確信している。今回のAMDとの協業では、最新デバイスの発表前からその技術を前提にしたシステムの開発が可能になり、早期の市場投入につなげられるだろう」と語る。
ローン氏は「Versal AI Edge Series Gen 2は、高いAI処理性能だけでなく自動車の安全システム向けで求められる低遅延性能でも優位性がある。AMDは産業別に新製品を展開する上で早い段階から要望を取り入れるためにリーダー企業との協業を重視しており、車載ステレオカメラのリーダーであるSUBARUとの協業でも大きな成果が得られている」と述べる。
SUABRUは現在、SUBARU車に乗車中の死亡事故とSUBARU車との衝突による歩行者/自転車などの死亡事故を2030年までにゼロにすることを目標としている。この2030年までの死亡事故ゼロに向けた取り組みの基盤になっているのが同社独自の総合安全思想だ。0次安全、走行安全、予防安全、衝突安全、つながる安全という5つの安全から構成されており、予防安全で最も大きな役割を果たしているのがEyeSightである。
同社は1989年にステレオカメラの開発を開始し、1999年に世界初の車載ステレオカメラとして「ADA」を発表。2008年には名称をEyeSghtに変更してから、2020年発表の最新世代に至るまでEyeSghtのブランド名でADASを展開しており、ユーザーからも高い評価を得ている。
ステレオカメラによる視差情報を基に人の目と同じ原理で立体視を可能とするEyeSghtは、全ての形を距離データ点群として捉えており、相対距離や速度から位置を特定し、カメラ映像の全画面にわたる高精度な立体化を可能としている。「10m先の車両後部を約4000個の点群として捉えるなど、高解像度の距離データ点群による物体検知の確実さなどが特徴になる」(柴田氏)という。
その一方で、高精度な物体検知を自動車が走行するさまざまな環境で発揮させるためには、実際にさまざまな環境下での走行データを取得して性能を作り込む必要がある。道路の整備状況や雨、風、雪などの天候が異なっても、同じ安全性能を発揮させるためにはリアルワールドにおける画像処理の難しさへの対応が鍵になってくる。SUBARUにおけるステレオカメラ開発の歴史は、このリアルワールドにおける画像処理への対応を積み重ねてきた歴史であり、その実績がユーザーからの高い評価につながっているといえる。
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