品質保証とはその製品にお客さまの要求した期待の満足が実現するということを、お客さまがその製品を買ったり使ったりする前に、大丈夫だと請け合い責任を持つことです。
しかし、ただ「大丈夫だ」と言えばいいわけではありません。科学的、論理的、統計的な根拠が必要です。
さきほどのスイカの場合、八百屋さんはスイカの甘さをどのような根拠で保証してくれるのでしょうか。糖度測定器で全数検査しているのでしょうか。それとも必ず甘くなる品種、もしくは必ず甘くなる育て方があるのでしょうか。試食のスイカで証明するのでしょうか。
あなたはどのような証拠や仕組みがあれば要求品質(甘さ)が保証されている、と感じて購入しますか。糖度計の結果は絶対的に信用できるものでしょうか。同じ品種なら、全て同じ甘さになるのでしょうか。全部が同じ日当たりや水分量で育てるのは不可能に思えます。試食のスイカは甘くておいしかったけど、試食していないスイカも甘いということにはならないような気がします。
このように、さまざまに存在する品質変動要因をどのように根拠と結び付け、論理立てれば品質保証に対する信頼が得られるでしょうか。
どんな論理で、どんな根拠で品質保証をするのかという品質保証の仕組みのことを品質保証スキームや品質保証システムといいます。
この連載の後半では、AM製品の品質保証システムについて、どうすればそれが信頼できるものになるのか、ということを世界的に標準化して国際規格としてまとめたISO/ASTM 52920について解説します。
ところで、八百屋さんの経営全体に対する要求はないでしょうか。不具合があった時のフォロー体制や、品質を改善していこうとする体制や仕組み、あるいは店員さんの専門知識の豊富さなどです。
完璧な糖度計でスイカの糖度を全数検査する、という品質保証システムを持っていたとしても、その経営が品質や顧客満足をないがしろにしているとしたら、従業員に技術的な教育をせず、スタッフは糖度計の使い方を間違えているかもしれません。また、会社として品質をマネジメントする気がなく、検査結果を文書化しておらず、不良の原因を追及できないかもしれません。
このように購買者は品質保証システム以前に、企業の経営の仕組みが品質や顧客満足を大事にしているかも見ています。
今回はAMの品質保証について考える前に、より一般化した「品質保証」についてみてきました。次回は品質を重視した経営の仕組みと、品質保証システムについて考えていきましょう。
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