一方で、EXF-12だけではGreen Creativeの活動に賛同する業界ニーズに応えられないケースもみられたことから、同社はEXF-12の独自開発プリントヘッドをベースとするロボットアーム式の3DプリンタREX-BUTLERを開発し、2023年11月にタイで発表した。REX-BUTLERは、市販のロボットアームが造形テーブルを持ち、それを動かしながら造形を行っていく。その様子がトレーを持つ執事のように見えることから“BUTLER(執事)”と名付けられた。
EXF-12のプリントヘッドを専用ユニット(シーケンサー)に固定し、独自開発した造形テーブル(ヒートベッド)をロボットアームに持たせ、アームを可動させながら造形する。使用できるロボットアームは、現在Universal Robotsの協働ロボット「UR16e」で、「他の協働ロボットメーカーとの話し合いも進んでおり、順次対応する機種を増やしていく計画だ」(原氏)としている。
なお、REX-BUTLERは複合加工を実現するMMA(Multi-Mode Additive Manufacturing)システムとしての利用を前提としており、シーケンサーに固定するユニットを交換することで、3Dプリントだけでなく、切削加工、簡易型による成形などにも対応できる。さらに、中心にロボットアームを1台配置し、異なるユニットを搭載したシーケンサーを取り囲むように配置することで、3Dプリント⇒切削加工⇒仕上げといった一連の加工を、執事が給仕するかのようにさばいてくれるという。3Dプリンタ以外のユニットの開発も順次進めており、「フードプリンタ用のユニットなども準備する計画だ」(原氏)。
プラスチックリサイクル体験型ショールームのEX2には、現在、3Dプリンタ用ユニットが付いたREX-BUTLERの開発機が設置されており、造形の様子などをプラスチックリサイクル体験ツアーで、間近に見ることができる。
報道陣向けのプレオープンイベントでは、造形の失敗品をホロン精工のプラスチック粉砕機「COMPACK」で粉々にし、それを空冷式造粒機「e・PELLETER」に投入してリペレット化する作業を体験でき、リペレット化した材料を基に、REX-BUTLERでオリジナルデザインのスマートフォンスタンド(3種類のデザインから選択)を造形する様子を見学できる。造形時間は設定により前後するが、20〜30分程度でスマートフォンスタンドの造形が完了した。
プレオープンイベントに登壇した原氏は「将来的にプラスチックごみだけでなく、処理が厄介な残渣の課題解決の重要性はより一層高まっていく。そうした中、意味を持ったプロダクトの価値に注目が集まるはずだ」と述べる。その展開イメージの一例として、日本各地の特産品や魚介類などの残渣を利用したご当地樹脂プロダクトの開発の可能性や、試行錯誤から生まれたオリジナル配合のバイオマス樹脂やリサイクル樹脂を「ブランド米やブランドコーヒー豆のようなイメージで少量販売してみたい」(原氏)など今後の展望に触れた。さらに、材料に合ったプリントヘッドやAI(人工知能)を搭載したソフトウェア開発の必要性なども訴え、さまざまな形でGreen Creativeの活動を推進していく考えを示した。
「材料から3Dプリントまで誰でも体験できる場所としてEX2をExtraBoldの本社にオープンしたが、将来の展開としては、いろいろな地域や国にも、同様の施設を展開していきたい。そのためには、クリエイターやデザイナー、企業、教育機関、公的機関などの協力やコミュニティーの助けが不可欠だ」(原氏)
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