工学院大学は、発光層に岩塩構造の酸化マグネシウム亜鉛を用いることで、波長域190〜220nmで発光するUV-Cランプの動作実証に成功した。低圧水銀灯の代替光源や人と環境に優しいUV-C光源としての応用が期待される。
工学院大学は2024年3月18日、発光層に岩塩構造酸化マグネシウム亜鉛を用いることで、波長域190〜220nmで発光するUV-Cランプの動作実証に成功したと発表した。オーク製作所との共同研究による成果だ。
発光材料には、超ワイドバンドギャップ半導体として注目を集める岩塩構造(Rocksalt structured:RS)の酸化マグネシウム亜鉛(MgZnO)を使用した。MgZnOは、酸化マグネシウム(MgO)と酸化亜鉛(ZnO)の混晶で、混晶比率を変えると発光波長をUV-C域で自由に変化させることが可能だ。結晶は石英ガラス基板上に堆積した。
これを用いて石英ガラス製のランプバルブを製作し、その開口端部にフリットガラス材を使用してRS-MgZnO多結晶膜を溶着した。その後、放電ガスとしてKrガスを300Torr封入した。出来上がったランプに9kVp-pの電圧を印加し、波長146nmのKr2エキシマ光を発光させ、これを励起光としてRS-MgZnO発光層から発した光を裏面側より外部に取り出した。
このKr2エキシマ励起RS-MgZnOランプの発光特性を調べたところ、Kr2エキシマ光源から漏れた光に加え、RS-MgZnOの微結晶由来の発光を計測。ピーク波長は202nmだった。このことから、RS-MgZnOを発光層としたUV-Cランプの動作実証の成功が確認できた。
波長280nm以下のUV-C光は、地表に降り注ぐ太陽光には存在しないが、殺菌、水処理、空気清浄、半導体プロセス、医療などに広く活用されている。特に207〜222nmの深紫外光は、人の組織を傷つけずにウイルスを不活化する、人に優しいUV-C光源として注目されている。
現在、波長220nm以下の光源では、低圧水銀灯など放電ベースの光源が主流となっているが、「水銀に関する水俣条約」により将来的に使用制限が求められている。今回の研究により、RS-MgZnOを応用してUV-C光源を構築したことで、低圧水銀灯の代替光源や人と環境に優しいUV-C光源としての応用が期待される。
今後、RS-MgZnOの混晶比を変えることで、より短波長域のランプへの展開を目指すとしている。
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